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「国家・民族・戦争問題研究会」講義ノート　1995年７月

　●リヴァイアサン

誰かその外甲（うわよろい）を剥がん

誰かその双咢の間に入らん

誰かその面の戸を開きえんや

くさみをすれば光りを発し

口は火焔と火花を放ち

鼻の穴から煙を立て

渕をかなえのごとく

海を油釜のごとく湧きかえらす

地の上には是と並ぶものなし

これは恐怖なき身に造られたり

これは一切の高大なる者を軽視す

誠に諸々の誇り高ぶる者の王たるなり

（ヨブ記）

ホッブズ著「リバイアサン」口絵

　●ボスニア問題について。

　国際連合は、ボスニア・ヘルツェゴビナに対して国際秩序上、紛争はやめた方がいいと主張している。
　しかし紛争当事者達がそんな国際秩序を認めていないということが問題を継続させている。
　もともと民族問題とは外国が口を突っ込むことではないのである。
　ボスニア問題について最もよい対応策は、紛争当事者に武器を売らないことである。
　武器を売っている奴がいることこそが一番の問題なのである。
　しかし国際連合の主要国は武器輸出国である。この案が通るのは難しい。

　一国内にとどまった場合はともかく、国家間にまたがった民族問題の場合は国際秩序を重視しないといけない。

　●民族問題とは。

　「民族」に２つの意味がある。
　エスノとネーションである。
　エスノとは人種的な特徴によって民族を語る場合の言葉である。
　ネーションでは人種の意味はあいまいである。むしろイデオロギー的、文化的な特徴によって民族を語る場合の言葉である。
　「アメリカ人」などという人種はなく、これはネーションとしての民族である。
　アメリカは必死になってアメリカ人というネーションを作ろうとしているのである。

　ボスニア・ヘルツェゴビナ問題の場合、エスノとしてはユダヤ、クロアチア、トルコ、ギリシャ民族がからみあっている。またネーションとしては「大セルビア主義」で結び付いていた。
　そもそも第一次世界大戦前のバルカン半島は小国が一杯存在したところである。
　民族問題の巣窟と言ってよい。
　これらの小国群が古代以来周囲の大国のまぐさ場になっていた。
　それを第一次世界大戦後になって、これではいけないと「ユーゴスラビア」としてチトーが統合したのである。
　その時に使われたのが社会主義のイデオロギーだった。

　ユーゴスラビアという地名の由来も２通り考えられる。
　一つは南（ユーゴ）のスラブ＝南スラブ人の国という意味。
　もう一つは「スラブ」を「奴隷」の意味で解釈することであり、彼らがこちらの意味ですぐに開き直ることが問題なのである。

　またこの地域は鉱山があり、イギリスも色目を使っている。
　国連抜きで４ケ国が爆撃し続けるほどの何らかのメリットがあると考えるべきであろう。
　そもそも前述したように、この地域へ武器大国共が武器を売ることをやめればすぐに納まるのがここの紛争なのである。
　セルビア問題については旧ユーゴスラビア国内で騒いでいる分には他国は放っておいてよい。閉じられた領域内でかってに騒いでいる分にはかまわないのだ。

　中国西部の少数民族についても民族問題がある。
　蒙古の内と外とが分離について異を唱えている。

　民族問題について、あまりネーションの独立を言い立てると幻想がかってゆく。
　（各エスノが独立を言うことは当たり前のことである）
　では、どこまでネーションを主張してよいのか？
　他のネーションを認めているならいいと考えられる。
　これが他のネーションを認めないところまでゆくと幻想がかってくるのだ。
　八紘一宇や大東亜共栄圏などのネーションの主張がこれである。

　●戦争とは高度に人間の問題である（テキストＰ．６～）

　ウォルター・リップマン（ルーズベルトづきのジャーナリスト）は、人間は世界人倫連盟のメンバーであるべきだと論じた。
　国家にまかせるから戦争になるのであり、個人の結び付きにすると戦争は起こらないはずであるという。

　日本人は一人一人は穏やかであるが、国家となるとキチガイになる。（昔からの無礼講の思想である）
　ドイツ人は一人一人は賢いが、国家となるとバカになる。
　イタリア人は一人一人はメチャクチャであるが、国家となると大人しい。
　日本人の無礼講の思想は単なる集団主義の延長である。
　自分達を守るための結束、または元気になるための結束でしかない。
　要するに「したいことをする」ために結束する。だからその結束内の行動は放埒になる。元気主義のナショナリズムなのである。
　欧米人の結束（Soledaritee）は「何かから身を守る」（anti-etwas）ためにおこなう。
　こうなると、徒党としてのマナーも出てくる。

　徒党については、集団主義にも２種類がある。
　１つはZeele であり、発狂型である。欧米人ののぼせあがりがこれに当たる。
　もう１つは日本人の集団主義であり、普段の不自由さ（がまん）を自由に（気ままに）解放するためのものである。

　●日本人の徒党。

　人間は孤立していても集団であっても社会の一員である。
　日本人にはその「社会」の意識がない。
　あるのは「社会」ではなく「世間」である。要するに「身の回り」である。
　世間と言う意識は、始終ムラの中で周りから監視されているという感じを持たせる。
　この時には大人しくしている。
　ムラから出るとハネを伸ばす。それも一人では出来ない。仲間と連れ立って数をたのんでハネを伸ばすのだ。
　社会ではなくミニ世間の集積として、日本は構成されている。
　これには江戸幕府が民衆の間に「世間の装置」を仕組んだということもある。
　それが染み付いている。
　「社会になじむ」という発想もない。

　●言葉とは。

　言葉は情念のうなり声である。
　言葉に「流される」ことに２種類ある。
　１つは、単に乗せられることである。バブルの波に乗ったのはこのタイプである。
　もう１つは、信じて疑わないということである。
　これはだまされやすい。
　「神風が吹く」と戦時中の日本人が信じ切っていたのがこのタイプである。
　（「神風が吹く」とは最後には神様が助けてくれると信じることである）
　一人一人が人間関係を自分に都合がいいように考えると、このような他人任せの発想になる。

　●あいまいとは。

　考え方自体があいまいであることと、あるところから先を考えなくなる（判断停止＝エポケー）との２種類がある。
　判断停止と言ってもめんどくさいからエポケーするのではない。
　たとえば「戦争ー国家ー人間」の３点セットで考えなくてはならないのに、それをせずに判断停止することなどである。
　「戦争」、「国家」、「人間」と個々に考えていることについては、充分におこなわれているにせよである。
　図で描くと以下のようである。

あいまいの構図

　３点セットでまとめて考えることは、一人でやっても複数人で連動しても可。
　問題なのは、たとえ一人で考えていても、３つをそれぞれバラバラに考えてしまうことなのである。
　また「３つ」と言ったのは、第３項排除をしないためである。

　●ＰＫＯ問題。

　「イラクがクェートに侵入した」という言い方をする。
　しかし「侵入」と言った場合のその国境というものは欧州人が現地人の意向を無視して決めたものなのである。
　欧州人が自分達が過去にしたことのオトシマエをつけるためにイラク・クェート問題に手を出すというのならともかく、日本人はそんなケンカには関係がないと言い張ることが出来たはずである。
　ところがＰＫＯに荷担してしまった。
　イラク・クェートの国境問題の実相を知らず、ただ国際秩序のため！という大義名分に押し切られてしまったのである。
　日本の「もの知らず」、「こと知らず」がモロに噴出してしまったのだ。

　第二次世界大戦当時の、日ソ中立條約にしても、日本は結んだ途端にこれが永久に守られるものと思ってしまった。
　ソ連にとってはこの條約は単なる時間稼ぎにしか過ぎなかったのだ。
　日本は「條約は破棄されることがありうる」ということを考えてもいなかった。
　国際問題に対する日本のあまりにも甘い姿勢がここにもあった。

　●日本の戦後の平和とは。

　平和には２種類ある。
　積極的に戦争に反対して作ってゆくのが「和平」である。
　しかし日本の戦後の平和はこれではない。
　戦争はない方がいい、戦争は好ましくない、戦争には懲りたという形での平和である。

　そもそも戦争には加害者と被害者とがある。
　“戦争はもうイヤ”とは被害者の側が感じるはずのことである。
　ところが日本人は自分が戦争をしかけたはずなのに、自分の方が負けてしまった（加害者の自分の方がケガをした）ので、“もうイヤ”と言っているのだ。
　これでは対外的にはとても通らない。
　むろん“両方おたがいさま”は通用しない。

　「自分が痛い目に遭って、懲りてやめた」が日本人の戦争に対する反省の原点なのである。
　本来なら「他人に迷惑を掛けたから、反省してやめた」が本来の不戦の姿勢である。

　このような姿勢ではこれからの問題として、日本に被害がないという戦争には参加する恐れがある。たとえばアメリカの後ろについてゆくとか、金が儲かる戦争には参加するとかである。
　その意味で、朝鮮戦争は日本が手を汚すことのない戦争に乗った好例である。
　日米安全保障條約体制に乗ったこと自体が、真に戦争を反省していないということである。
　真の不戦なら、この時点でも参加を拒否すべきだった。

　「戦争は悪だからやめろ」という意見がある。
　これには２つの問題がある。
　１つは、「悪」とは他国に迷惑を掛けるという意味であるなら、それなら迷惑度の低いものならいいのか？という問が生まれることである。
　また、迷惑を掛けたかどうかは結果論に過ぎない。日本では「国内に迷惑を掛けるから悪」というが、さすがにこれは通らない。
　より根本的なもう１つの問題は、では戦争は本当に悪かどうかを言わないと本当の反省にならないということである。

　不戦なら正義か？ということも問われる。
　戦争することを選ぶ方が正義であるかもしれない。
　ミュンヘン会談の時、チェンバレンがヒトラーの言うことを全部飲んで、戦争をその時は回避した。
　しかし、その裏でチェコスロバキアは分割された。またナチス・ドイツはこの会談を機会として一気に対外的勢力を増大させた。

　●刑罰とは。

　刑罰の意味は、懲らしめ、償い、社会的報復の３つがある。
　懲らしめは、「懲らしめ」＋「見せしめ」による再発防止が狙いである。
　償いは、「罪」と「罰」との交換である。
　社会的報復は、社会が迷惑を受けたので、それに対する社会的制裁である。アメリカの陪審員制度はムラ社会の村八分（社会的制裁）をシステム化したものである。

　死刑について、その刑罰としての意味は何か？
　見せしめとしては効果なないと言える。
　償いなら他の方法がある。
　社会的制裁で殺すのは民度が低い。野蛮である。
　こうなると、死刑は無意味になり、単なる国家による殺人となる。

　そもそも「殺人は死刑に値するほどの悪か？」という問がある。
　「悪」であるという根拠は、モーゼが“汝、殺すなかれ”と言っているからということになる。
　これは「人間は殺すな」と言っているのであって、人を殺すこと自体の是非を言っているのではない。
　どういうことかと言うと、殺人を認めると人間としての社会生活が成り立たなくなることを諌めているのである。
　これは、法律の範疇というより、もはや戒律の範疇の問題なのである。

　人間としての生活を送る為には社会は必要なのか？
　“人間は殺すな”なら“人間は生かせ”ということか？
　そこまでやって、人間を生かすことが必要なことなのか？
　社会はもう人を生かし疲れているのではないか？等々。
　これほど、根拠があいまいである上であえて「人間は殺すな」を守らせるためには、苛酷な「戒」が必要となる。
　それが死刑である。

　殺人を反生命の立場から解釈すると、「大事論」になり、償い、懲らしめになる。それでは死刑の罰の必要はない。
　殺人を反社会の立場から解釈するからこそ、死刑が必要となる。

　人が殺人をあまりやらないのは、“殺し合わないのが常識（約束）”というレベルで「刷り込み」が行われているからである。
　ヒンズー教とが“牛を食べないのが常識（約束）”と刷り込まれていることと同じである。
　刷り込みを変えれば、反社会的なことも平気で出来るようになる。
　オウム真理教は“殺してもいい”と信徒に刷り込んだ。だから平気で殺せたし“戒律を破ったのだから仕方がない”と殺人を平気で認めることが出来た。

　殺人は根本的な「戒」を侵すから罪になるのだ。
　人が社会で守るべき規範は２層構造になっている。
　底層には“汝、殺すなかれ”と言う「戒」の層がある。
　これを侵すことに対しては、どんな制度になっても変わらない刑が用意されている。
　その上層に社会のしくみ、制度という層がある。
　これを侵すことに対する刑は制度によって変わる。
　刑法では、この２層を区別して適用していない。
　しかし、意味的には刑の重い軽いが問題ではない。
　「戒」を侵したのか、制度を侵したのかが問題なのである。
　殺人とは「戒」を侵したからこそ、死刑が適用されるのである。

　“戦争がなぜいけないか？”に対する答えも明かである。
　戦争は社会の根底を脅かすことで、「戒」を侵すからである。
　ここにホッブスの矛盾が現われる。
　個人は殺人を侵してはいけない。社会の根底をゆるがすからである。
　そこで国家が殺人をまかされている。
　しかし、国家も国際社会の一員を構成している。
　その国家が戦争を侵すことは国際社会の根底をゆるがすことになる。
　となると、国家に殺人がまかされること自体、論理矛盾ではないか？

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　参考

　　八紘一宇：
　大東亜共栄圏建設の理念として用いられた言葉。第2次近衛文麿内閣が決定した基本国策要綱の中の「八紘ヲ一宇トスル肇国ノ大精神」に由来。書紀の「八紘(ｱﾒﾉｼﾀ)を掩(ｵｵ))ひて宇(ｲｴ)にせむ」を全世界を一軒の家のような状態にすると解釈したもの。

　大東亜共栄圏：
　第二次大戦中に日本の中国、東南アジア侵略の合法化を目的とした指導理論。日本が指導者となって欧米勢力をアジアから排斥し、日本、中国、満州を中軸とし、フランス領インドシナ(仏印)、タイ、マレー、ボルネオ、オランダ領東インド(蘭印)、ビルマ(ミャンマー)、豪州、ニュージーランド、インドを含む広範な地域の政治的・経済的な共存共栄を図るという政策を掲げた。

　ユーゴスラビア（Yugoslavia）
　欧州南東部、バルカン半島西部を占めた社会主義連邦共和国。セルビア、クロアチア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、スロベニア、マケドニア、モンテネグロの6共和国から構成されたが、1991年にクロアチア、スロベニア、マケドニアが、92年にはボスニア・ヘルツェゴビナが、それぞれ独立を宣言し、連邦は崩壊した。セルビアとモンテネグロは92年、新たに2国だけでユーゴスラビア連邦を結成した。旧ユーゴは255,804平方キロ、2,348万人(1991)。新ユーゴは102,173平方キロ、1,041万人(1991)。首都は新・旧ユーゴともにベオグラード。
　　旧ユーゴは国土の大部分が山地・高原で、北西部はアルプスの延長部をなし、西部のアドリア海岸には⇒ディナルアルプスが走る。北東部にはドナウ川・ティサ川流域の平野がある。南部のアルバニアとの国境にはスクタリ、オフリド、プレスパなどの湖がある。アドリア海岸では地中海式気候、内陸部はやや大陸性となる。住民の約36％がセルビア人、約20％がクロアチア人。全体の約40％が東方正教(セルビア正教、マケドニア正教)徒、約30％がローマカトリック教徒で、イスラム教徒も多い。セルボ・クロアト語、スロベニア語、マケドニア語が用いられる。
　　新ユーゴの住民の約65％はセルビア人で、ほかにアルバニア人、モンテネグロ人などがいる。宗教は、セルビア人、モンテネグロ人の間ではセルビア正教徒が、アルバニア人の間ではイスラム教徒が多い。
　　　　旧ユーゴでは第二次大戦後、産業国有化、農業の集団化が進められたが、農業面ではすでに1950年代初めに協同組合への加入脱退の自由が認められ、工業面でも1965年の経済改革などにより、国内企業間の自由競争が認められるなど、労働者自主管理制度と外交面の非同盟政策を2本の柱とする独自の社会主義路線を歩んだ。74年に新憲法、翌年に自主管理法典が制定された。80年5月のチトー大統領の死後、徹底した集団指導体制がとられたが、次第に中央の連邦政府への求心力は弱まった。また、経済的には対外債務が重圧となり、インフレが続いた。これに民族問題や地域間対立がからんで、多民族国家としてのユーゴ連邦は、91年6月のクロアチア、スロベニア両国の独立宣言を機に崩壊した。
　　新ユーゴの元首は大統領。国会は市民院(定員138)と共和国院(定員40)の二院制。
　　6～7世紀ころ南スラブ族がこの地に定着、セルビア人、クロアチア人、スロベニア人に分化、中世～近代にかけオーストリア・ハンガリー帝国の支配下にあった。第一次大戦後の1918年にセルビア・クロアチア・スロベニア王国が建設され、29年ユーゴスラビア王国となったが民族問題で紛争が続いた。第二次大戦中ドイツに占領されたが、チトーの指導で抵抗運動を展開、自力で解放を実現し、46年共和制を樹立して社会主義圏の一国となった。48年コミンフォルムの批判を受けてソ連の指導を離れたが、独自の社会主義路線を推進し、東西両陣営間にあって積極的中立政策をとった。

　ミュンヘン会談
　1938年ミュンヘンで開かれた英・仏・独・伊の首脳会談。チェンバレン,ダラディエ,ヒトラー、ムソリーニが出席。ドイツが,チェコ領のズデーテン地方を併合する意図を明らかにしたために激化した緊張を緩和する目的で開かれた。英・仏は宥和（ﾕｳﾜ）政策をとって,ズデーテン地方の対独割譲を決定。

　チェンバレン（Arthur Neville Chamberlain〔1869～1940〕）
　英国の政治家。J.チェンバレンの子。初め実業界で活躍、第一次大戦中政界に進出。郵政相、保健相を歴任後、1931年蔵相となり世界恐慌対策に手腕を振るい、英帝国内の特恵関税制度を確立。37年ボールドウィンのあとを継いで保守党党首、首相となった。以後ソ連と対立、独・伊との妥協を固執する外交政策（宥和（ﾕｳﾜ）政策）をとり、ファシズム勢力の増大を許し、第二次大戦初期の作戦指導に失敗して40年首相を辞任。
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　●戦争に関する小林先生による本の紹介

　・「太平洋戦争　兵士と市民の記録」奥野健男　監　講談社文庫
　さまざまな戦記もののサワリの部分を収録したもの。

　・「近代政治思想史」　　　　　　田中　浩　著

　・「瀕死のリヴァイアサン」　　　山内昌之　著　　講談社学術文庫
　ロシアのイスラムを中心とした民族問題を説き、民族問題をかかえた国家のもろさを語る。
　リバイアサン（Leviathan）は旧約聖書に現われる巨大な水生の怪獣。レビアタンとも言う。ヨブ記41章ではワニ、イザヤ書27章ではヘビとされている。ホッブズは近代国家をリバイアサンにたとえ、論文の題に採用した。
　なお今回の会報の冒頭は小林先生の御指示による、旧約聖書「ヨブ記」からの引用によるリヴァイアサンの禍禍しい描写で始まっているが、この「瀕死のリヴァイアサン」は冒頭に旧約聖書「詩篇」からの引用によるリヴァイアサンの滅びをほのめかすことから本を始めている。

なんぢその力をもて海をわかち水のなかなる龍（たつ）の首（かうべ）をくだき

リヴァイアサンのかうべをうちくだき

野にすめる民にあたえて食となしたまえり

（「詩篇」七四篇十三～十四節）

以上

文責　＆　HomePage 制作：（株）マネジメント・サイエンス研究所

コンサルタント　城　誠

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「国家・民族・戦争問題研究会」講義ノート 1995年７月

「国家・民族・戦争問題研究会」講義ノート　1995年７月