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今日において生活とはどういうことか

＝エピステーメ（実践知）の科学化を?¥;X$7$F

「企業と商品」誌1997年2月号～11月号掲?¥?

　生きる論が何故「あるべき論」になるのか

　人間にとって、生きていくということは最も大事なことであり、同時にきわめてむずかしいことである。にもかかわらず、古来、エライ人たちは何故かこのことを眞面?¥$K!"bC7u$K9M$($F$3$J$+$C$?!#
　人間いかに生きるかについてはもちろんいろいろいわれてきた。だがそれは「人間パンのみにて生きるに非ず」式の精神論として「生きる」論であって、だからそういう「生きる論」はいつか現実の「生きる」からはなれて抽象化し、観念化し、「生きる論」がいつか、「あるべき論」（ゾルレン）の方に舞い上がってしまった。
　もちろん、「人間いかに生きる」かということは、同じ「生きる」も動物のそれと人間のそれとではちがうということで、当然、人間としての「あるべき」生き方が問題とされることはいうまでもないが、その場合でも、その「あるべき論」が余りにも、人々の現実の「生きる」問題からかけはなれてしまったのでは、身も蓋もなくなる。
　そのかけはなれた「あるべき論」の最も極端なのが、佛教のそれで、佛教は、現実は仮の世（虚化＝コケ）で人間はチリ、芥にひとしいとみる。だからそんな世界で生きるためにあくせくするなど愚かなこと。さっさと現世から足を洗ってしまえ。それが人間の?¥Ev$N@8$-J}$@$J$I$H$$$&!#=P2H!"2rC&$N$9$9$a$G$"$k!#
　一方、中国の儒教では佛教のような現世離脱を前提とするのでなく、現世でいかに生きるかを考えているわけだが、それでもいかに生きるかは総じて、精神主義の「あるべき論」にすりかえられている。礼と仁の世界に身をおくことが、人間の?¥Mh$N;Q$@$H$$$&$3$H$K$J$C$F$$$k$+$i$G$"$k!#
　もちろん、中国には孟子のいわゆる「修身斉家治国平天下」に見るように君主や為政者には民を食べさせて安穏にくらさせる責任があるという思想があり（こういう思想はヨーロッパにはない）、それを「徳」ということばであらわしている。人民が鼓腹撃攘（腹一杯たべて、鼓をうってあそび狂う）した、古代尭舜の世が政治の理想とされている。
　だが、いずれもこれは君主としてのあるべき論で、広く一般的な人間の生き方を説いているわけではない。またそこにでてくる生きる問題はあくまでも支配者側からの「生かす論」であって、人々の?¥Ev$N<+H/E*$J!V@8$-$kO@!W$G$O$J$$!#
　これに対して老子や荘子などは「無為自然」といって、上のものが何もしないことが、支配ということで一番いいことだなどといっている。孔子、孟子の窮屈な「あるべき論」に比べるとはるかに気楽な君主論（老子は決してアナーキストでなくレキとした王政主義者なのである）であるが、このことは別のいい方をすると、人間生きるも、生かすもどうでもいい。そんなことは放っておけということでもある。生きたいと思うものは、それなりに工夫して勝手に生きろ。現世から離脱して仙人になるのもよし、陋巷（裏通りの貧乏作家）に身を沈めて朽ち果てるもよしというわけである。

　穴に落ちた哲学者

　西欧ではどうかというと、ソクラテスやプラトンをはじめとして古代ギリシャのエライ人達の思想は見事といっていいほどに「いかに生きるか」という現実問題を無視している。哲学の父といわれるミレトスのタレスが「もの」を考えていて穴におち、田舎の婆さんに笑われたという有名な話がある。
　彼らは天文や自然の運行には関心があったが、自分をふくめて人間の問題には全くといって無関心だったのである。たまに人間に関心をもったとしてもせいぜいがソクラテスの「無知論」による「あるべき論」であり、プラトンの多分にホモセクシャルくさい「愛」を媒介としての「あるべき論」がおちである。
　この「あるべき論」はその後も、あるいは今日でも西欧人が人間についていろいろ考えるうえでの暗黙のバック?¥!<%s$K$J$C$F$$$k$N$G$"$k!#

　はじめは「生きる論」であったキリスト教

　これに対して古代のユダヤ教や初期のキリスト教はどちらかというと「いかに生きるか」論に近かった。何しろ旧教の世界は、エデンの国で「生かされていた」人類がエデンから東の荒地に追放され、改めて「生きていく」ことに眞剣にならざるを得なくなった、いわゆるアダムとイブの伝説から始まっているのである。中頃からそれはエホバという神との契約による生き方の問題にかわってくるわけでも、それでも全体として、「あるべき論」より「生きる論」がベースになっていた事にはかわりない。それはいいかえると、中近東の砂漠の世界という最も過酷な世界での古代人類の「生活」の苦斗とチエの神話化された世界の宗教であったといえる。
　この点、初期キリスト教も同じで、キリストが説いてまわったのは、人間の「あるべき論」でなく、いかに生きるか論であったのである。ただし旧約の世界でのように神々によってきびしくしばられた世界での生活でなく、やさしい神の愛によって見守られた世界での人間の生活として。
　そのキリスト教がやがてギリシャに伝播するなかで、ギリシャの人間ばなれ、生活ばなれした哲学と合体しキリスト教そのものが神学化し、観念化し、人間ばなれ、生活ばなれしていくのである。ローマに入ってその傾向は一層強くなりその人間論は遂にはスコラ哲学やアウグスティヌスの教義のような、徹底した「あるべき論」になりはててしまうのである。

　神に向かっての「知」をもとめた西欧人

　そもそも、西欧では学問も思考的模索も、「知」の探究からはじまった。「知」といっても「生きる」ための「知」ではない。神を全知全能と見立ててその「知」に向かって一歩でも近づこうという意味での「知」である。「知」のことをソフィーというが、ソフィーとはそのような意味での「知」なのである。
　そこから、ギリシャ独特の哲学が生まれ科学思想が生まれた。またそれがその後の西欧の哲学と科学を支える土性骨になった。
　ちなみに、ギリシャ以来の西欧の哲学や思想が霊肉分離ということを公然、非公然の前提としているのはこのことと関係がある。
　何故なら、人間の「知」が神のそれに近づくためには人間の中の（頭の中の）霊的な働きだけが大事であって、肉体の働きなど何等関係がないと見たからである。
　いいかえると「頭」だけを重視して「肉体」を馬鹿にしたということで、このことをもってしてもギリシャ人やそれにつづく歴代の思想家達がいかに現実的な「生きる」の問題を無視していたかが分かる。
　人間「頭」だけでは生きられない。「肉体」だけでも生きられない。頭と肉体の両面あっての人間であり、またその意味で頭は神に向かうためのものでなく、現実に生きていくための思考とフィードバックのシステムであることは誰の?¥$K$bL@$i$+$JH&$J$N$K!#

　身体をゴミ扱いする東洋哲学

　この点、東洋では佛教をはじめとして、霊肉分離ということはいわない。そのかわり霊肉一体ということも敢えていわない。何となく「心身一体」といっていることから、どちらかというと身体論くさい。だが、その身体そのものが現世のチリ、芥視されているのであるから「心身一体」といってもそれほどに迫力がない。
　また、佛教でもヒンズーでもその他何でも「知」の問題を扱うが、その「知」はギリシャ、西欧のように神に向かっての「知」でなく、「身体」をチリ、芥のそれからぬけ出させる（解脱という）ことから自ずと出てくる「知」もしくは「力」のことをいう。たとえば、「悟り」という形で出てくる認識論的なチエ、あるいは身体の修行によって出てくる「念力」のような力。
　だから、東洋には西欧のような哲学や科学が生まれなかったのである。
　だが、いかに「悟り」のチエや「念力」の力が湧いて出てきたところで、それが人間の現実的な「生」と何の関係もないこと、ギリシャや西欧の哲学、科学のそれと全く同じなのである。
　西欧の哲学が霊肉分離しての「頭のあそび」なら東洋の修行は身体をゴミ扱いしての「身体のあそび」、でなければゴミのリサイクルのための知的いたずらであるといえる。
　要は、人間生きていくためにはソフィーの「知」も「悟り」のチエも「念力」もいらない。いらないどころか役にたたないし、かえって邪魔である。
　「生きていく」ためには哲学や佛教、儒教でいう「知」と全くちがった、もっと現実的で切実な「知」が必要なのである。その、考えてみるときわめて大事な「知」の探究がこんにちまで長い間、エライ人達、頭のいい人たちによってないがしろにされてきた。
　そんなことで、この先一体どうするのか、ということである。

　「文化論」はなぜこむずかしくなるのか

　たとえば、「文化」というと何やらむずかしい、わけのわからぬことになりがちであるが、「文化」とはそれ程こむずかしいものではない。要は、人間が生きていくために自然や「もの」や環境、あるいは人間や情報をつかいこなしていった（ユース・インした）チエの実績なのである。「文化」が、地域により民族により、いろいろ多様であるのは、「つかいこなし」の対象が、地域により、民族によりそれぞれ異なるからである。
　また、われわれ現代人が古代の文化、文物に心を惹かれ、感動するのは、現代とちがって、何もかも不安だらけの時に、よくもまあ、こんなものでこんなものをつくり出したものだとそのユース・インのチエのすさまじさをその中に感じるからである。
　こういうユース・インのチエは、その後世の中が文明化し、「もの」でも道具でも何でも満ち足りるようになると次々に退化する。　「文明おこって文化すたる」ということで、それが余りでかくなると、シャックリのような形で文化論や「古代なつかし」の復古主義がでてくる。
　でてくるのはいいが、でてくるたびに「文化」というものが何やらむずかしげなものになってくるのが問題である。
　それは、文化とは「もの」のユース・インのチエの集積であるということを忘れて、そのチエの集積から出てくる何やら精神的な、たとえば、古代文物にただよう気品のようなもの、それをつくった古代人の心のようなものにとりつかれてしまうからである。もちろん、そういう気品や心を大事にしてわるいことはないのであるが、それがユース・イン（つかいこなし）のチエから生まれ出たものであることを忘れてしまうと、せっかくの気品論も心論も何やら神秘的でおかしなことになる。
　かつて、戦前の一時代を風靡した、ドイツ西南学派のリッケルトその他の文化主義がそれである。これが日?¥$K$bHt$S2P$7$FBg@5!a>F!W$J$Y$r$D$D$$$F$3$l$r!VJ82=$@!W$J$I$H$&$5$P$i$7$r$7$?$b$N$G$"$k!#L@<#$N@N$K$"$C$?!VJ82=Fi!W$K$A$J$s$G$N$3$H$G$"$k!#

　「文化」とはユース・インのチエの集積

　ついでにいうと、この「文化とはもののユース・インのチエの集積である」という定義は、筆者が戦前の苦い経験もあって、その後、永らく模索しつづけてきた結果、漸く手に入れることができた定義である。他の誰もいっていない。全く筆者が独自につくった定義である。だが絶対にまちがっていないと確信している。
　たとえば文化のことをカルチュアーという。カルチュアーとは耕作することである。何故文化がカルチュアーなのかというと人間が生きて行くためにはまず土地という「もの」を徹底的につかいこなす、そのために耕すことが何よりも大切なことだったからである。それも土地というものは、その土質といい肥沃度といいきわめて不均等かつ多様なものであって、土質がよく、肥沃度に富む土地なら耕作も簡単だが、土質が悪く、水かかりもわるく、日当たりもわるい土地だとそのユース・インには並々ならぬ、それこそ「耕して天に達す」程のチエと苦労が必要なのである。それを土地に文句をいわないで、ひたすら「もの」になるようにせっせと耕してきた。そこから農作業の文化が生まれてきた。だから文化のことをカルチュアーというのである。
　ところがいわゆる文化論のセンセイたちにかかると、カルチュアーの意味がそうでなく、畑を耕すようにひたすらものごとを深く掘り下げ、掘り起こすことということになる。そこから何やら精神主義めいた怪し気な文化論が出てくるわけである。
　深く掘り下げるか、堀り上げるかはどうでもいい。それは土地の質によってきまることなのである。深かろうが浅かろうが、要は人それぞれにあてがわれた土地をそれなりにフルに高度に利用し「つくす」ということが大事なのであってカルチュアーとはそういう意味でのカルチュアーなのである。
　ついでにいうと文化のことをカルチュアーというのは主として農耕系の世界でのことで、遊牧系や牧?¥7O$N@$3&$G$OJ82=$N$3$H$r%+%k%A%e%"!<$H$O$$$o$:%F!<%_%s%0$H$$$&!#%F!<%_%s%0$H$OF0J*$N;t0i!";t$$Fk$i$7$N$3$H$G$"$k!#$D$^$j!"$3$&$$$&@$3&$G$OJ82=$O$^$:<+A3!"Ln@-$NF0J*$N;t$$Fk$i$7!J%F!<%`!&%$%s!K$+$i;O$^$C$?$H$$$&$3$H$GJ82=$N$3$H$r%F!<%_%s%0!J$"$k$$$O%F!<%_%s%0!&%*%V!&%5!<%t%'%$%8!aLnHZ!K$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　要はカルチュアーといおうが、テーミングといおうが、全ては人間が生きていくために、「もの」のつかいこなし（ユース・イン）について必死のチエをし?¥$C$F$-$?!"$=$N%A%($N=8@Q$G$"$k$H$$$&$3$H$K$O$+$o$j$O$J$$$N$G$"$C$F!"$=$N0UL#$G$OJ82=$H$OE0DlE*$K@83hE*$J%A%($N=j;:$G$"$k$H$$$&$3$H$G$"$k!#$=$3$K$O!V$"$k$Y$-O@!W$J$I$H$$$C$?Cj>]E*!"4QG0E*$JM>J,$J$b$N$O2?0l$D$J$$$N$G$"$k!#
　アダムが耕し、イブが紡いだときに精神やイデオロギーなど何一つなかったように。
　もちろん貧しい中で「もの」をユース・インするためには、それなりの気力や精神力が必要である。その意味で文化に精神的なものが付随するのは当然であるが、それは文化主体者のいう精神とは何の関係もない。つまり同じ精神でも根性としての精神（ゼーレ）に関係があっても観念として精神（ガイスト）には関係ないということである。
　つまり、哲学者や神学者がいろいろ勝手なごたくを並べている間に、一般の人間には、生きていくために、それなりのチエを必死にし?¥$C$F$-$?$H$$$&$3$H$G!"$=$N0UL#$GJ82=$NC4$$$b$J$-?M$?$A$G!"7h$7$F%(%i%$?MC#$d%$%s%F%jB2$,$D$/$j=P$7$?$b$N$G$O$J$+$C$?$H$$$&$3$H$G$"$k!#

　ソフィーとエピステーメ

　そういうかりに「文化」ということで培われてきたチエと「知」を今ここでもう一度改めて考え直すことが必要なのである。
　そこで、かつての「ソフィー」としての知に対するエピステーメとしての「知」の大事な問題がある。
　このエピステーメ（ギリシャ語）ということはごく最近いわれだしたのであるが、まだその意味がはっきりつかまれていないようである。何となく「ソフィー」の知とはちがうことはわかっていても何がどうちがうか今一つはっきりしていないのである。
　その証拠にエピステーメは哲学の知なのか、科学の知なのかといったわけのわからぬ議論がおこっている。エピステーメをめぐっての縄張り争いであって、馬鹿々々しいもいいところである。
　エピステーメとはズバリいって実践の「知」なのである。またその意味で「生活の知」そのものなのである。また、その意味で文化的な知そのものなのである。
　問題はその実践の「知」が、とかく経験主義による、アナログ的な開かれた「知」でないところにある。その「知」を開いていくことが必要なのである。
　そのためには、これまでに開発されてきた科学の力をかりる必要がある。その意味でエピステーメは哲学より科学とより深い関係にあるということになるが、それは決して科学そのものがエピステーメ化するのでなく、エピステーメが科学化することを意味するものであって、このことをとりちがえないことがエピステーメとは何かを正しくとらえるうえで肝心なことなのである。
　要するに科学的知はそのまま「実践知」ではない。「実践知の科学化」が必要であり、またそれであって始めて科学は人類の生活に役に立つ?¥Ev$N2J3X$K$J$k$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　最後に、ここで「生きる」ということはきわめて広い意味での「生きる」ということをふくむ。まず「生きる」ために食べていくこと、そのために食べ物をつくることから始まる。そのうえでいかに生活していくかという生活のしかたの見直しと工夫の問題がくる。また忘れてならないことは、「もの」をつくるのも生活のうちだし、そのものづくりを資?¥$NNO$K$h$C$F5,LO$r$U$/$i$^$;$?6aBeE*$J;:6H!"4k6H$b@83h$N$&$A$@$H$$$&$3$H$G$"$k!#$b$A$m$s!">&6H$=$NB>$N$$$o$f$k?&6H$J$k$b$N$b@83h$=$N$b$N$@$H$$$&$3$H$K$J$k!#$H$/$K:#F|$N?M8}$NCf$G05E]E*$J%7%'%d!<$r@j$a$k%5%i%j!<%^%s$dDBO+F/l$NCf$G$b$=$l$J$j$K@83h$7$F$$$k$N$@$H$$$&$3$H$rK:$l$F$O$J$i$J$$!#!VF/$/!W$N$O@83h$N$?$a$N/$J$/$H$b;:6H3WL?0JMh$NF/$/?M!9$N>o<1$K$J$C$F$$$k$o$1$@$,!"$=$N>o<1$,2x$7$$!#F/$/$3$H$b@83h$N$&$A$H$$$&$3$H$G$=$N>o<1$r5?$C$F$_$k$3$H$,Bg;v$@$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　もちろん生活は個人としてのそれだけではなく、社会的生活をもふくむ。その意味でここでいう生活とはきわめて広く多様な面をふくんでの生活なのである。
　以下、その生活なるものについて逐一考えていくことにする。

　「生きる」とは動くこと

　「生きる」とは「息る」つまり息をしているということで、生命あるものの「しるし」である。つまり、「生きる」とか「生きている」とは、生命体（動植物の全て）という「物体」の存在様式の一つである。これに対して、生命体でない「もの」の存在様式は、文字通りの「存在」である。
　「存在」とは、何らかの時間、空間の座標の中に「於いて在る」ことである。
　だが、同じ時間、空間の座標の中に「於いて在る」といっても、生命を持たない「もの」と、生命をもつ「もの」とで、その「於いて在る」在り方が大きくちがう。
　生命をもたないものは、座標内のどこかにその位置が固定している。外からの力が加わるか、内部に何らかの異変がおこらない限り、いつまでも置かれたままである。
　これに対して生命体の存在は固定的でない。すなわちあちらこちらに動きまわる。だから生命体のことを一名「動物」ともいうのである。またその意味では植物も動物のうちに入る。何故なら、植物の?¥BN$O8GDjE*$G$"$C$F$b!"$=$N]!W$@$+$i$G$"$k!#2P$,$D$$$?$j>C$($?$j$9$k$N$HF1$8$G!"$3$&$$$C$?$3$H$O!VF0$-!W$H$O$$$o$J$$$N$G$"$k!#$^$?!"$3$&$$$&F0$-$O!"!VB8:_!W$KIT2D7g$J;~4V!"6u4V$N:BI8$H$O4X78$J$$!#:BI8$O:BI8$G$bJL$J:BI8$NCf$G$D$/$i$l$k!#
　たとえば力学的座標の中で、あるいは力学以外の何らかの「条件」（リレーション）によってつくられる座標の中で。

　「動く」とは時間からズレること

　話を動物にもどして、それなら「動く」ということはどういうことかというと、時間と空間の座標の中でその存在が、時間軸からはなれて空間軸の方に向かってひろがっていく、あるいは偏曲（デヴィエイト）していくということである。
　手っ取り早くいうと、時間から空間の方にどんどんズレていくということである。
　たとえば、忙しく動きまわっていると時間を忘れる。また、場所は?¥F0$7$F$$$J$/$H$b!"2?$+$KG.Cf$7$F$$$k$H;~4V$rK:$l$k!#$H$$$&$3$H$O!"$=$l$@$1F0$$$F$$$k!J?HBN$@$1$G$J$/?4$b!K$H$$$&$3$H$G$"$k!#$^$?!"2?$b$7$J$$$G$¥$s$d$j$7$F$$$F$b;~4V$rK:$l$k!#$@$,!"$3$N$¥$s$d$j$7$F$$$k$H$$$&$3$H$b!"?4$NCf$G$N2?$i$+$N0U<1$NF0$-$H$+$+$o$C$F$$$k$H$$$&$3$H$G!"$d$O$j$=$l$J$j$NF0$-$N0l$D$J$N$G$"$k!#$D$^$j2?$b$7$J$$!J%I%&%J%C%7%s%0!K$bF0$-$N$&$A!"@);_$b$=$l$J$j$KF0$-$N$&$A$@$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　だから、することなすこと、時間時間と時間を気にするということは、かりに「動き」はあっても、その「動き」は?¥J*$G$O$J$$$H$$$&$3$H$G$"$k!#!VF0$-!W$OF0$-$G$b$=$l$OF0J*E*$JF0$-$G$J$/!V5!3#E*$JF0$-!W$G$"$k!#
　このように「動く」とはいろいろな意味で、時間か空間に向かってズレていくことで、この原理は動物も人間もかわりない。
　だが、動物の場合、そのズレ方は動物の生態から生ずる利害の意識や必要によって半ばパターン化され、その「動き」にはさほどの多様性がみられないのであるが、人間の場合にはその「動き」はかならずしも生態的利害にのみ即すとは限らず、そういった要因を超えて、広く?¥E*$d0U<1$"$k$$$O0UM_$K$h$C$F!VF0$/!W$H$$$&$3$H$,$"$k$?$a!"?M4V$N!VF0$-!W$OF0J*$N$=$l$KHf$Y$F$O$k$+$KB?MMB?4t$K$J$k$H$$$&$3$H$K$J$k!#6u4V$X$N%:%lJ}$,$=$l$@$1J#;(B?MM$K$J$k$H$$$&$3$H$G!"$=$l$,F1$8!VF0$-!W$G$bF0J*$N$=$l$H?M4V$N$=$l$H$NBg$-$J$A$,$$$J$N$G$"$k!#
　つまり、「生きる」とか「生きている」ということは、「動いている」ということである。つまり生きて活動しているということでそれが「生活」ということの意味だということである。リブとライフのちがいもそこにあるということである。リブとは単に生きること、ライフとは生活していること。
　つまり「生きる↓動く↓生活」ということであって、単に「生きる」でも意味がない。また「動く」からといってその動きが余りにも時間軸にしばりつけられていたのでは、それは機械的な動きでしかない。従って、そんな「動き」でかりに生活していても、その「生活」は?¥Ev$N@83h$G$O$J$$$H$$$&$3$H$G$"$k!#

　人間「何か」をしていないと生きていけない

　それでは「動き」とは何か。それは何かをする（ドウ）ことである。「ドウ」（動）とは「ドウ」（する）ということだというのである。
　いいかえると「生きている」ということは常に何かを「する」ことであり、その何かをしないことにはいきていけないようになっているということである。
　その意味で「生きている」ということは、単にイキをしているということだけでなく、大小無数のドウの集積だということになる。
　まず、生きていくためには食べ物をさがさなければならない。あるいはつくり出さなければならない（動植物の飼育栽培から料理まで）、また生活の場（住居その他）をつくらなければならない。またそれを入手するためにほかに何かをしなければならない。結婚して家庭をつくって子供や家庭を?¥$o$J$1$l$P$J$i$J$$!#
　それだけでなく、環境そのものに対しても何かをしなければならない（環境に従うか、環境を改善するか）、まわりの人々に対して何かをしなければならない（ケンカするか、仲よくするか、助け合うか）。その他人それぞれが何らかの?¥E*$r$b$C$F$=$l$rC#@.$9$k$?$a$K2?$+$r$7$J$1$l$P$J$i$J$$!#
　また、それらの「ドウ」にははっきり仕事という形をとった「する」と、趣味やあそびという形をとった「する」との二つがあるが、その区別はここではどちらでもいい。
　要は、「生きている」ことのうらにはこういった大小無数の「ドウ」が積みかさなっているということで、それが「生活」というものだということである。

　生活と「くらし」

　ただし、その場合、これらの「ドウ」を意識的にくりかえしている場合と、半ば無意識的にくりかえしている場合の二つにわかれる。
　前者の場合を「生活」といい、後者の場合を「くらし」という。
　「生活」と「くらし」の区別は外国にはない。どちらも「ライフ」である。「くらし」とは日?¥FHFC$N$3$H$P$G$"$k!#
　それは生活の「ドウ」をことさらに意識しない生活形態のことをいう。つまりそういう状態で、存在（生きる）についての時間と空間を消費していくことである。単に「ライフ」でなく「スペンド・ライフ」である。いわゆる月日を送るということで、どちらかというと生活様式（ライフ・ウエー）の問題というより生活感覚（ライフ・センス）の問題に近い、日?¥FHFC$N@83hI=8=$G$"$k!#
　といって、何もかも、?¥$s$d$j$H$7$F7nF|$rAw$C$F$$$k$+$H$$$&$HI,$:$7$b$=$&$G$O$J$$!#$=$3$K$O$=$l$G$=$l$J$j$K@83h$KI,MW$J9gM}E*$J%I%&$,$"$j!"$$$E$l$b$=$l$r%-%A%s$H$d$C$F$$$k$o$1$@$,!"$=$N!V%I%&!W$r$$$A$$$A0U<1$7$J$$$G!"$4$/<+A3$J7A$G$/$j$+$($7$F$$$k!#I,$:$7$b%@%i%@%i$H$7$?%^%s%M%j$G$N$U$d$1$?@83h$r$7$F$$$k$o$1$G$O$J$$!#$=$3$K$O!"$=$l$J$j$N3h5$$,$"$jA08~$-$N0U<1$b$"$k!#$=$l$G$$$F!"$I$3$H$J$/$J$a$i$+$G%.%9%.%9$7$?$H$3$m$,$J$$$h$&$J@83h!#$=$l$rF|K¥8l$G!V$/$i$7!W$H$$$&$o$1$G$"$k!#
　その意味で「くらし」は「生活」より上等である。「くらし」こそが生活の理想であるということになる。

　憂き世と浮き世

　だが、日?¥?M$N!V$/$i$7!W463P$O$H$+$/%M%,%F%#%t$J%K%R%k$JJ}LL$K$=$l$d$9$/$=$3$N$H$3$m$,LdBj$G$"$k!#$?$H$($P!V$/$i$7!W$,L5>o46$K$H$j$D$+$l$d$9$$!#L5>o46$H$O!"@$$NCf$,L5>o$J$N$G$J$/!V@83h!W$NCf$G<+8J$N%"%$%G%s%F%#%F%#$,J]$F$J$$$3$H$J$N$G$"$k!#
　フランス人のいうアンニュイ（倦怠）の感じに似たような感覚である。
　何故そうなるかというと、日?¥?M$K$O!JF|K¥?M$@$1$G$J$/ElMN?M$K$O!K@8$-$k$?$a$N%0%i%&%s%I$G$"$j4D6-$G$"$k8=C6KE*$JBVEY$G@¥$9$k$H$$$&FHFC$N@$3&4Q$,$"$k$+$i$G$"$k!#8=@$$r$&$-@$!aM+$-@$!"8=@$$O88$H$$$&PG65E*!"F;65E*@$3&4Q$,@w$_$D$$$F$$$k$+$i$G$"$k!#

　ながらへば　亦この頃や偲ばれむ
　　憂しと見し世ぞ　今は恋しき
　　　　　　藤原清輔朝臣（百人一首）
　心にもあらでうき世にながらへば
　　こひしかるべき　夜半の月かな
　　　　　　三條院（百人一首）
　花の色はうつりにけりないたづらに
　　我がみよにふるながめせしまに
　　　　　　小野小町（百人一首）
　世の中はつねにもがもな　なぎさ漕ぐ
　　海人のをぶねの網手かなしも
　　　　　　鎌倉右大臣（百人一首）
　世の中よ道こそなけれ思ひいる
　　山のおくにも鹿ぞなくなる
　　　　　　皇太后?¥BgIW=S@.!JI4?M0l
　という次第で日?¥$N8EMh$NJ83X!"J87]$NCf$G@$$NCf$rL5>o$H$+!VM+$-@$!W$H8+$?$F$?:nIJ$r$5$,$7$@$7$?$i$-$j$,$J$$!#%O%s%K%c%O%i%_%D%?$N!V?'B(@'6u!"6uB(@'?'!W$NPG65E*L5>o46$N1F6A$,$-$o$a$F:,$E$h$$$N$,F|K¥?M$N@$3&4Q$G$"$k!#$@$+$i@83h$KBP$7$F@Q6KE*$K$J$l$J$$!#2?$H$J$/F|$rAw$C$F$7$^$&$H$$$&%M%,%F%#%V$J!V$/$i$7!W46$KMn$A9~$s$G$7$^$&!#
　だから、「くらし」というと、何となく無気力でだらしのない生き方ということで否定的にみられがちなのであるが、そういう「くらし」を見下した生活感がとんでもないのである。「くらし」は生活より?¥Mh>eEy$J$N$G$"$k!#
　もっとも、この世を「憂き世」とみるのは、元来が生活に退屈しがちな上流の貴族階層に限ったことで下々の庶民となるとたとえ「憂き世」であろうと現世はいやでも直面しなければならないのっぴきならぬ生活の場である。だから無常だのヘチマだのとごたくをならべているひまはない。そんなごたくをならべるより必死で生きていくことの方が先なのである。
　だから、どうせ生きるならということで少しでも楽しく生きることを考える。そこから庶民独特の世界観が生まれてくる。それが「浮き世」である。つまり浮かれた世、元気に満ちた世ということである。
　「うき世」が憂き世と「浮き世」にわかれるのはこのためである。
　ただしこの浮き世は?¥Ev$N@$$NCf$H$$$&$3$H$G$O$J$$!#!VIb$+$l$k@$!W$J$N$@$+$iB?J,$K8= 　だが、かりにそれが幻想とバブルの世であっても、そうとでも思わなければ人生生きていけないという庶民の切実な現世についての願いがこもっているところに、浮世の浮き世たる所以があるということである。
　この「浮世」は庶民の間で発散という形をとることが多い。つまり日常の生活の破?¥$r$O$E$7$FGOMNN.$K$$$&$H%G%#%*%K%=%9$N%P%C%+%9$X$NJQ?H$G$"$j!"$=$&$$$&0UL#$G$N 　この浮き世を、気まぐれの発散型でなく、ある程度意識的に計画的につくり出すということになると、ドラマということになる。
　もっともドラマというと、ギリシャにはじまるヨーロッパのそれは、運命（フォトウルナ）と斗うことを主眼としたフィクショナル・アクションということになっているが、日?¥$G$N$=$l$K$O1?L?$HEM$&$h$j$^$:!"M+$-@$$HEM$&$H$$$&$3$H$r2$$N$=$l$HF|K¥$N$=$l$H$NBg$-$J$A$,$$$K$J$C$F$$$k!#
　だがいずれにしても、そこには、憂き世では感じられない、浮き世独特の息吹きが大きくものをいっていることは同じである。スピノザやニーチェのいう「生存への意志」が強く働いているということである。

　「与えられた時間」から「つくる時間」へ

　人間の「ドウ」が時間軸からズレて空間軸の方にひろがると、時間的にしまりがなく、だらだらふやけてしまうように思われる。
　だが、そんなことはない。それはそれでちゃんと「時間」がついてまわっているのである。ただそれは地球的、物理的な時間でなく「ドウ」の中で自らつくられていく時間である。テンポとかリズムというのがそれである。あるいはけじめとか節度とかスピードというのがそれである。
　つまり、人間の「ドウ」が時間軸から空間軸にズレていくということは、地球的、物理的に与えられた時間軸から、自らつくり出した時間軸につくということである。すなわち「ドウ」をはさんでそこに二つの時間があるということである。そして、与えられた時間から、つくり出した時間にいかにしてうまく?¥9T$9$k!J%7%U%H$9$k!K$+!"$=$l$r9*$_$K$d$C$F$N$1$k$3$H$,$$$o$f$k!V@83h>e 　「ドウ」に余程長けていないと中々そうはいかない。「ドウ」はドウでも受身のイヤイヤのドウではそうはならない。いずれも自分で時間をつくれないまま、与えられた時間にしばられてしまうのである。小学校のときたかが四、五十分の授業が途方もなく感じられたのは、授業そのものがいやで仕様がなかったからである。大人になって時間が短く感じられるのは、「ドウ」を挺して前向きに、眞剣にやっているからである。
　哲学者にいわせると時間とは意識時間である。だが単なる意識時間ではない。何らかの「ドウ」とむすびついての意識時間である。
　たとえば地方にいくと地方時間（時差ではない）というものがある。南方には南方の時間がある。いずれもそれらはそれらの地域に住む人たちの意識と関係があるが、それはジェームス・ジョイスの「流れる意識時間」（ユリシーズ）でもなくマルセル・プルーストの「失われた時」のような時間ではない。その地域に住む人たちの「ドウ」と生活の中から自ずとつくられてきた生活時間なのである。動物に腹が減ったら?¥$,$5$a$k!VJ";~7W!W$H$$$&$b$N$,$"$k$h$&$K!"EO$jD;$K$=$N;~5($,Mh$?$i0l@F$KHt$S=P$5$;$k!V5(@a;~7W!W$H$$$&$b$N$,$"$k$h$&$K!"2f!9$N@83h$K$b$=$l$J$j$N!V@83h;~7W!W$,$"$k$N$G$"$k!#$3$l$rC1$K0U<1$N;~4V$H$_$k$+$i!"COJ}$N?M$O$@$i$7$,$J$$!"COJ}$N?M$?$A$O%¥%1$F$$$k$J$I$HGO 　物理学の相対性理論のように、与えられた時間そのものを理論的にズラしてそこに新しい次元の世界をつくるというならいいが、与えられた時間もつくられた時間も、その見境いなしに全てを意識の時間に解消してしまったのでは、人間それこそ宙に浮いてしまう。それを「実存」というのは哲学者の勝手だが、現実の生活と何の関係もない。のみならず、そんなことでは先ずもって生きていけない。
　時間をつくるとはどういうことか。たとえば、ものごとをうまくやれるようになると、それだけ必要時間は少なくなり、それだけ時間的に「ゆとり」ができる。この「ゆとり」の時間が「ドウ」によってつくりだされた時間である。あるいは「ドウ」だからといって何も急ぐことはない場合にはのんびりやる。その場合は時間は最小限必要な時間より多くかかることになる。この多くかけた時間が自分でつくった時間なのである。いいかえると「つくる時間」とはドウに対する最小限必要時間をめぐってのプラスとマイナス両面で出てくる時間だということである。何が何でも早くやって時間を浮かせればいいというものではない。のんびりとたっぷり時間をつかった方がいいときもある。どちらにするかは時と場合による。要は時間を自分なりに「ドウ」との関係で自由にコントロールできればいい。またそれで生活に間に合えばそれで十分だということである。

　二つの「実践」と二つの「知」

　実践知（エピステーメ）とは文字通り、実践についての「知」である。
　実践とは、何かをする（ドウ）ことであるが、その実践とは所詮我々がこの世を生きていくためのものであって、その意味で、「実践知」とは生活知そのものといってもいい。
　問題は、その実践が、そのありようによって二つにわかれることである。
　一つは、何らかの生活上の意図や?¥E*$K$h$C$F9T$o$l$k3hF0$b$7$/$O9TF0$H$7$F$N 　今一つは、右のような意味での活動や行動の中で、その過程内で行われる大小様々な活動や行動としての実践である。
　前者を、その中に後者の実践を包み込んでいるという意味で「大実践」とすれば、後者は、その中に包みこまれる小さな実践という意味で「小実践」ということになる。
　あるいは前者が?¥E*$KBP$9$k0lO"$N3hF0$H$7$F!V@~!W$N$h$&$J$b$N$@$H$9$l$P!"8e 　たとえばどこかへ行こうとして道を歩く。その場合我々には二?¥$N5S$rF0$+$7$F$$$k$o$1$@$,!"$=$NF0$-$O7h$7$F2h0lE*$K%Q%?!<%s2=$5$l$?F0$-$G$O$J$$!#.@P$K$D$^$E$$$?$j!"3,CJ$r$N$¥$C$?$j9_$j$?$j$9$k!#$D$^$j!"5S$O$=$N>l$=$N>l$K$h$C$F$$$m$$$m$JF0$-J}$r$7$F$$$k$o$1$G$"$C$F!"$=$&$$$C$?5S$N0l$D0l$D$NF0$-$K;Y$($i$l$F!"2f!9$K$OL¥E*CO$KC)$j$D$/$3$H$,=PMh$k$N$G$"$k!#
　つまり、?¥E*CO$K8~$+$C$F!VJb$/!W$H$$$&0lO"$N!V%I%&!W$N$&$i$K$OBg>.MM!9$J5S$NF0$-$H$7$F$N!V%I%&!W$,$"$k$H$$$&$3$H$G!"$3$N$&$AA0. 　同じようなことは仕事についても、遊びについてもいえる。ケンカや議論についてもいえるし、商売や戦争のような「ドウ」についてもいえる。
　つまり、実践とは

　　　大実践（多くの小実践）

　あるいは

　　　線（多くの点）

　であるということで、知を実践についての知ととらえる場合、まずこのことをはっきりさせておくことが必要なのである。
　何故なら、一口に実践の知といっても、そこには「大実践」としての知と「小実践」の知、あるいは「線」としての知と「点」としての知の二つがあるからである。
　どちらも、「実践知」ということで我々が生きていく上で大事な「知」であるが、だからといって、この二つの「知」を無視して、二つをごっちゃに扱ってしまったのでは、肝心の「実践知」そのものがわけがわからなくなる。「実践知」を単なるハウツーや経験の問題として片づけないで、これを少しでも科学的な知に近づけていくためには、「実践知」そのものを、二つの実践とのかかわりで、厳密にわけてとらえ直すことが必要なのである。
　とくに今日では、「大実践」については、いろいろなハウツーや習慣がつくり出されており、我々がこれに従う限り、日常の生活にはことかくことがないが、その反面、そのうらにある大小様々の「小実践」が無視されたり、いい加減にされたりということになりがちである。そして「小実践」という「ドウ」は、ただでも、そういうことになりやすいものなのである。
　何故なら、それは、殆どが、道を歩くときの脚の動きがそうであるように無意識のうちに行われるものだからである。

　動かなくなったムカデの脚

　いいかえると、我々が何かを「する」とき、頭は?¥E*$KBP$7$F$$$+$K9gM}E*$K3hF0$9$k$+$H$$$&$3$H$KBP$7$F=8CfE*$KF/$$$F$$$k$,!"$=$NCf$G$N!V>.Dx$N$3$H$G$J$$8B$j!"$=$l$[$IF,$rF/$+$7$F$$$J$$$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　「小実践」の殆どが身体まかせ（反射神経やホメオスタシスまかせ）なのである。あるいは完全に身体まかせとまではいかずとも、多少は頭を働かせる場合はあっても、その殆どは無意識に近い過去の習慣、経験のくりかえしなのである。たとえば「慣れ」とか「熟練」（スキル）というのがそれである。
　逆にいうと、「大実践」の中で頭がいちいち「小実践」について考えたり、こだわったりしていたのでは、肝心の「大実践」そのものがうまくいかないということになる。また、頭があまり「小実践」に介入しすぎたのでは「小実践」そのものがギコチなくなり、場合によっては「動き」そのものが止められてしまうということになる。
　ムカデの頭がムカデの脚に、「何でお前達は百?¥6a$$5S$r8+;v$K!"$&$^$/F0$+$7$F$$$k$N$+!W$H 　つまり、脚の動きは、脚まかせにしておいた方がいいということで、これと同じようなことが、我々の「大実践」、「小実践」との間についてもいえるということである。
　といって、ムカデの脚は全く考えていないかというと、そうではない。それはそれなりの考えてはいるのであるが、その考え方は頭でのそれとは全く異質であるということである。
　たとえば、頭での考え方はすぐれて理性的である。これに対して、手足や身体の考え方はすぐれて感性的である。あるいは、頭の考え方は論理的であるが、手足や身体の考え方は、多分に状況対応的（順応あるいは回避ということでの）である。どちらも合理的であるが、その合理性貫徹の意味もありようも大きくちがうのである。
　さらにもっと大事なことは、頭は考える機関として公然と独立しているが、手足や身体には考えるための機関が独自につくられていないで、身体の各部分、部分に、あたかもミニコンピューターのような形で分散的に埋設されている（たとえば手足や身体の大小様々な関節あるいは首や腰のまわりの神経叢がそれである。あるいはこれらのミニコンピューターをオンライン化したいわゆるホメオスタシスのシステムがそれである）。その意味では身体も考えているわけだが、その「考え」は頭でのそれが多分に意識的であるのに対して、きわめて無意識的なそれに近いといえる。
　つまり、「大実践」について考えるのは頭で、「小実践」について考えるのは身体でという風に、実践への「考え」が、システムとしてはっきり分業化されているということで、こういうことになっているから、我々は日常の実践活動でそれほど「小実践」について頭をなやますことがないようになっているのである。これを「頭（脳）の負担軽減の原則」という。

　「小実践」を考え直そう

　だが、余りこの「原則」にもたれかかりすぎるとロクなことにはならない。
　何故なら、「小実践」が身体まかせとといっても、その身体まかせが多分に怪しいことが多いからである。たとえば身体で考えるといっても、そこには、身体の動きを厳正に導くための?¥Mh$N9M$(J}$H!"B?J,$K0[$J$C$?M>7W$JMW0x$,2C$o$j!"$=$l$,?HBN$N9M$(J}$=$N$b$N$rBg$-$/68$o$;$k$H$$$&$3$H$K$J$j$,$A$@$+$i$G$"$k!#$?$H$($P!"!V$/$;!W$d3hF0$K$D$$$F$NM>J,$J?@7P$N$3$o$P$j!J$=$N5U$N$?$k$_!K!"$"$k$$$O!VBg 　こういう余計な要因の加わった考え方では、いかに小実践は身体まかせといっても、それでもってよしとして安心することはできないのである。
　そんないい加減な考え方での「小実践」には必ずムリがあり、ムダがある。
　だからそういうムリ、ムダだらけの「小実践」をくりかえしていたのでは、いつか、その上の「大実践」もおかしくなるということにならざるを得ない。表向きの技（ワザ＝ハウツー）にはすぐれていてもプレイの中身の出来ていない選手がいつかは?¥%m$r=P$7!"%@%a$K$J$k$h$&$K!#
　その意味で、「実践知」を科学的にゆたかに拓いていくためには表の「大実践」についての能を肥やすだけでなく、そのうらにある「小実践」についての改めての見直し、反省が必要ということになる。
　とくに今日のように「大実践」についてのハウツーや情報がいろいろ拓かれバラまかれているようなときには、尚のこと、「小実践」についての反省と掘り下げが必要になってくる。
　身体づかいだけでなく、日常の活動の中での一挙一動、そのときその場での対応のしかたの一つ一つについての深い反省と掘り下げが必要ということになる。

　氷壁の?¥$j$N$-$S$7$5

　たとえば、アルプスやヒマラヤの山に登る山男たちにとって実践とは正に「小実践」についての生命がけの試行錯誤そのものである。彼等にとって「大実践」とはきわめて単純明快である。すなわち登頂を?¥;X$9$3$H$G$"$k!#$"$k$$$O4dJI$dI9JI$rEP$C$?$j!"%H%i%P!<%9$7$?$j$9$k$3$H$G$"$k!#$@$,$=$N!VBgl$N$I$3$KBG$A$3$_!"0lJb0lJb$NB-$r$I$3$K$+$1$k$+!#?HBN$^$+$;$I$3$m$+!"$=$N0l5s0lF0$KF,$+$i?HBN$NA4$F$N?@7P$r$9$j$X$i$9$N$G$"$k!#0lJb$G$b4V0c$($l$P!"$=$l$3$=0l4,$N=*$o$j$J$N$G$"$k!#
　すなわち、山男にとっては、最初から最後まで、生命がけの「小実践」の連続だということである。いいかえると「極限状況」においては実践とは「小実践」についての思考と工夫のくりかえしがあるのみ、「大実践」などメではないということである。
　だが、我々は危険な山に登っていないので、安全な平地の上で活動している。だから、我々は「小実践」について山男のような生命がけの感覚をもっていない。大抵のことは?¥$r$D$V$C$F$$$F$b2?$H$+$d$C$F$$$1$k$H!"$N$s5$$K$+$^$($F$$$k!#
　だがそののん気さが曲者なのである。
　たまには、山男程ではなくても、その万分の一でもいいから、それなりの危機感をもって、日常活動のうらにある「小実践」を考え直すことが必要なのである。
　そこから、?¥Ev$N

　「プラクシス」から「プラティク」へ

　こういう知のことを「プラティクな知」という。
　「プラティク」とは「小実践」としての実践のことである。
　これに対して、いわゆる「大実践」は「プラクシス」である。
　これまで、「実践」というと大も小も一まとめにして「プラクシス」ということで片づけられてきたのであるが、こんな大ざっぱなことでは「実践知の科学化」は出来ない。「実践知」の科学化のためには、実践そのものを大小二つにわけることが必要であり、またそのうえでこれまで大の実践のかげにかくされてうやむやになっていた小の実践を考え直すことが必要ということで、新たに生まれてきたのが「プラティク」ということである。だから「プラティク」ということばは新語である。
　たとえば、文章を書く（エクリチュールという「ドウ」）ということは「ことば」という記号あるいは表現の素材を操作してのプラティクとしての「ドウ」である（デ・ユング「知の最前線」ＴＢＳブリタニカ）。

　人間とは頼りないもの

　たとえば、家を留守にするときドアにカギをかけたか、後になって心配になることがある。ときにはもどってたしかめないことには気がすまなくなることがある。
　殆どの場合カギはかかっているのであるが、それが気になるということは、カギをかけたという「ドウ」そのものを頭がしっかりと記憶していないからである。
　何故かというとカギをかけたのは手であって、頭ではないからである。そして、手に限らず身体だけでやった動作は余程のことでない限り、頭の中で記憶としてのこらないようになっているのである。それを記憶として頭の中にきざみこむためには、手による動作プラス別の動作が必要なのである。とくに声を出すということが必要なのである。大きな声を出さずとも口の中で小さな声を出すだけでいい。たとえば「カギかけたぞ」、「ロック、ＯＫ」という風に。そうすればその声が脳に伝わって記憶につながるということになる。飛行機や列車の運行運転で呼唱とか後唱ということがやかましくいわれるのはこのためである。つまり声にはレスポンス（応答）ということで、脳の記憶作用を刺激する働きがあるということである。同じ動作でも単なる手足や身体の動作にはそれがないということである。
　その意味で、身体の動作というものは、かりにそれがしっかりしているとしても、いざ記憶ということになるときわめて頼りないものなのである。
　いいかえると我々は日頃何かにつけて、おれのやってことには間違いないなどと自信満々であるが、その実、実際やったことについては何一つ記憶していないし、?¥Ev$K4V0c$$$J$$$+$H$$$o$l$k$HESC<$K%I%-%I%-$7$F<+?.$r$J$/$7$F$7$^$&Dx$KMj$j$J$$B8:_$J$N$G$"$k!#$D$^$j!"<+J,$G$d$C$F$$$J$,$i!"$d$C$?$3$H$K$D$$$F?4Dl$+$i<+?.$r$b$C$F$J$$!"Mj$j$J$$F0J*$@$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　こういう自信あり気でその実自信ない活動をくりかえしていると、いつかはノイローゼになり、ひっこみ思案になる。もちろんすることなすことうまくいかなくなる。
　そういうことにならないように、普段から手足の活動、身体の活動を、その都度、必要によって確認するくせをつけておくことである。
　そこからプラティクへの反省がはじまる。
　船や飛行機のような場合はその運行の過程の中で生ずる様々なプラティク（変針や修正、あるいは高度の変更）はそれぞれ計器によってキャッチされ、チャート化される（航跡図や飛行図等）からいいが、我々人間の「ドウ」にはそういう計器もチャートのシステムもないのである。
　それにかわるものは小さな「ドウ」の一つ一つについての慎重な配慮と、それを何とかして記憶にとどめたいという執念をおいてほかにはないのである。
　「小実践」（プラティク）をいいかげんにして「大実践」に向かってひたむきに走る事を無我夢中という。あるいはガムシャラとか「一直線」という。
　「小実践」にこだわりすぎて、「大実践」の方がとかくいい加減になりすぎるのを、よくいえば慎重、わるくいえば「おっかなびっくり」、あるいは「道草くい」という。道草とは「小実践」が?¥Mh$N!VBg/$J$/$J$$$N$G$"$k!#
　どちらも実践と言うことでは失格である。
　「大実践」と「小実践」との質的なバランスどりが大切で、そのためにも、プラティクへの警戒心と細心の注意力が必要なのである。

　プラティクのチエは子供のあそびから

　このプラティクのチエは原則として子供のうち、幼児のうちに自らつけられていく。何故なら子供の世界での実践とは「大実践」より「小実践」のシェアーが高いのが普通だからである。つまり子供は大人とちがって、日常の活動にさほどの?¥E*0U<1$r$b$?$J$$!#9%4q?4$d$=$N$H$-$I$-$N>c32J*$H$N4X78$G!"C1$K?HBN$rF0$+$7$F$$$k$3$H$NJ}$,B?$$$+$i$G$"$k!#$=$l$O!"7A$O$A$,$C$F$b4m81$G0lGU$N;3$N4d>l$K$X$P$j$D$$$F$$$k;3CK$,E0DlE*$K%W%i%F%#%/u67$K$h$C$F!"$I$&$7$?$i$$$$$+$r$=$l$J$j$K??7u$K!JF,$@$1$G$J$/?HBN$G$b$C$F!K9M$($k!#$=$N%W%i%F%#%/$N%A%($,$d$,$F?HBN$K$7$_$3$s$G!"$=$l$,Bg?M$K$J$C$F$$$m$$$m$N!VBg 　その意味で、子供の活動体験はきわめて貴重である。最近の子供にはそういうのびやかなプラティクの体験が不足しているようである。子供のときに大人まがいの?¥E*;X8~$N!VBg$,5[$$4s$;$i$l!"L¥E*$+$i$O$J$l$F!"<+M3$KF0$-$^$o$k$H$$$&$3$H$,$=$l$@$1>/$J$/$J$C$F$k$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　こんなことでは子供の将来が思いやられる。大実践どころか、一寸した簡単な「小実践」でつまづきそうである。どうしたらいいか途方にくれたり、ただでもたよりない自信をなくして自閉的なカラにとじこもるということになりそうである。
　生きるためにはいろいろな「大実践」としての「ドウ」が必要である。だがその「大実践」を明るく前向きに押し出していくためには、その裏でくりかえされる大小様々な「小実践」（プラティク）についての工夫とチエが必要である。「大実践」（プラクシス）にもチエが必要だが、それ以上に「小実践」（プラティク）についてのチエが必要であるということである。
　どちらも「実践の知」である。だが、?¥Ev$N!VCN!W$O%W%i%/%7%9$h$j$b%W%i%F%#%/$H$7$F$N 　その「プラティクの知」をどうして科学化していくか。そこに今日のエピステーメ（実践知）の最大の問題があるといえる。

　何で「マニュアル」なのか

　アメリカ人はマニュアル好きで、機械のあつかいから、仕事のしかたまで、なんでもマニュアル化してしまう。
　マニュアルとは、一般に「手順」といわれる。だから、マニュアルは活動するための順序、活動のステップという風に思われがちである。だがマニュアルは決して活動をいくつかの小活動に分解しての順序やステップでないのである。
　それは、「大実践」の中でとくに大事な「小実践」について、そのやり方をパターン化し、定型化したプラティクについての指示書なのである。
　もちろん、指示書といってもプラティクのはしはしまできちんと定型化することはできない。プラティクには状況によって多少のプラマイの凹凸があるのは仕方がないことだからである。同じ実践でも多分に論理的なプラクシスだと、その実践の凹凸は、時によってなくすることができるわけだが（たとえば百米競争では、ランナーが文字通り寸分のムダもなく一直線に走るようにしつけられるように）、プラティクとなると、それが状況によっての多分に感情的な活動であるから、何もかも論理的なマス?¥$GN'$9$k$3$H$O$G$-$J$$$N$G$"$k!#
　そこで、はしはしのプラマイのところには?¥$r$D$V$C$F!"%W%i%F%#%/$H$7$F$N$4$/Bg;v$J$H$3$m$@$1!"$=$N?D$K$J$k$H$3$m$@$1$rDj7A2=$7!"$=$3$@$1$r$7$C$+$j$*$5$($F$*$1$P%W%i%F%#%/$H$7$F==J,$H$$$&$3$H$G!"I,MW$J%W%i%F%#%/$r=g=x$h$/$J$i$Y$"$2$?$N$,$$$o$f$k%^%K%e%"%k$J$N$G$"$k!#

　マニュアルは「規定」ではない

　日?¥8l$G%^%K%e%"%k$N$3$H$r!V5,Dx!W$H$$$&$N$O$3$N$?$a$G$"$k!#
　「規」とは定形化されたプラティクということである。「程」とは「ほど」でプラティクのはしはしのプラマイ、凹凸のことである。つまり、プラマイは実行者にまかせる。先ずはプラティクとしての基?¥$@$1$O$7$C$+$j$5$;$F$*$1$H$$$&$3$H$G$=$l$,!V5,Dx!W$N!V5,!W$N0UL#!"!VDx!W$N0UL#$@$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　ついでにいうと「規程」は「規定」ではない。「規定」とは「きまり」であり、活動をいちいち厳重に規制でかこってしまうことである。だがこういった活動の規制は何らかの意図や?¥E*$K$D$$$F$N%W%i%/%7%9!JBg. 　つまり、マニュアルは「規程」であって、「規定」ではないということである。
　ところが、日?¥8l$G$O1&$NFs$D$,2;FI$_$9$k$H$$$:$l$b!V%-%F%$!W$G$"$k$?$a!"$H$+$/5,Dx$H5,Dj$,$4$C$A$c$K$J$j$d$9$$!#$=$N$?$a%^%K%e%"%k$b$H$+$/!V5,Dx!W$G$J$/!V5,Dj!W$H$$$&$3$H$K$J$j$,$A$G$"$k!#
　日?¥$G$H$+$/%^%K%e%"%k$,=i?4/$7$P$+$j;E;v$J$l$7$?e$K$=$N0UL#$,!V5,Dx!W$G$J$/!V5,Dj!W$H$$$&Iw$K6J2r$5$l$F$$$k$?$a$H$$$&$3$H$,Bg$-$$$N$G$"$k!#%^%K%e%"%k$H$O$H$+$/!VBg. 　いいかえると、さきにもいったように、プラティクの「知」がとかく経験や勘による「暗黙知」に堕しがちなのであるが、それを「暗黙知」でなく一つの「開かれた知」という形で明文化したのがマニュアルだということである。
　この点、我々日?¥?M$O$3$H%W%i%F%#%/$K4X$9$k8B$j!"@N$b:#$bKX$I!V0EL[CN!W$K$?$h$j$,$A$G$"$k!#$=$l$r!V3+$+$l$?CN!W$K8~$+$C$F$H$i$(D>$=$&$H$$$&EXNO$,$-$o$a$FK3$7$$!#$@$+$i%^%K%e%"%k$K$D$$$F!"$D$/$kJ}$b!"$=$l$K=>$&J}$b!"<+B>$H$b$K$-$o$a$F>C6KE*$GITG.?4$G$"$k!#$=$&$$$& 　アメリカ人のようにマニュアル気狂いになれというのではない。そこまでいかなくとも、その何分の一かのマニュアルマインドがあった方はいいのではないかということである。でないと、「実践知」は永久に拓かれないことになる。

　プラティクの「知」は正しい身体づかいから

　たとえば身体の動かし方。実践、とくにプラティクとしてのそれには、これが何よりも大事なことなのであるが、それがきわめて無理無策だらけである。
　手でも足でも、?¥E*0U<1$,@h$K$?$C$F$NWs0UE*$J$D$+$o$lJ}$,@l$i$G!"$=$NF0$-$,>/$7$b?HBN$N!"$"$k$$$O6ZFy$N<+A3$N1?F086M}$KB($7$F$$$J$$!#$=$N$?$a!"!VBg 　身体の動きには、その中に自然に組みこまれた筋肉の運動（マシーンとしての）原理があるのであって、それに従って身体を動かしている限りかりにどんなにその動きが烈しかろうと、一寸やそこらで身体がいたんだり、調子がわるくなったりするものではないのである。
　たとえば、犬でも馬でもその他どんな動物でも身体を動かしすぎてケガをしたり病気になったりということはない。それは動物はどんな場合でも身体の自然の動きに即した動き方をしているからである。
　人間だけが、身体を動かしていてケガをしたり病気になったりするということは、その動きが身体の自然の動きに即していないからである。それどころか反していることが多いからである。
　その意味で人間の身体程プラティクということで無視されているものはないといっても過言ではない。
　だからプラティクの反省と、そのための「知の探究」は何よりもまず身体づかい、身体の動かし方の見直しからということになる。
　この点、最近のスポーツ界では多少気づかれているようであり、たとえばカイネティック、キネーシス、あるいはエルゴロジーという新しい観点から身体の動きの謎の解明が行われだしたようであるが、まだまだそのアプローチは単純で、その掘り下げは浅いようである。
　たとえば、それらはいずれも体内の筋肉の動きに注?¥$7$F$$$k$N$O$$$$$H$7$F!"$=$NCmL¥$N$7$+$?$,$"$/$^$G$b6ZFy$N%(%M%k%.!<$H$7$F$N>CLW$N$7$+$?$NJ}$KJP$C$F$$$F!"6ZFy$,$I$&$$$&7A$G%Q%o!<$r=P$9$N$+$H$$$&!"%Q%o!<%G%#%t%'%m%C%W$NH/A[$H$ODx1s$$!#?HBN$N$"$A$i$3$A$i$K!V6ZEE?^!W$NB,Dj4o$r$H$j$D$1$k$@$1$,G=$G$O$J$$$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　人間の身体の動きのしくみは、そんなに大層なことをしなくとも一寸ばかり注意ぶかく動きを観察し、それを身体的実感に即して直していけば自然と解明されるようになっているのである。この身体的実感ということが肝心で、身体の動きがごく自然で無理やムダがなくなれば、何ともいえないいい感じがあるものなのである。そういう身体的実感のつみ重ねから身体的動きとしてのプラティクの知が拓かれていくのである。

　私の「?¥%G%#!&%^%M%8%a%s%H!W$N0UL#

　たとえば、私が今から二十年前（昭和五十七年）に書いた「?¥%G%#!&%^%M%8%a%s%H!W!J 　これは私の長い間のスポーツをはじめとしての人間の身体の動かし方への観察と探究の産物である。
　どうしたら、つかれない、いたまない、ケガをしない、快適な身体の動かし方ができるか。この一点にし?¥$C$F!"@h$:Jb$-J}!"Av$jJ}$+$i;O$^$C$F!"?e1K!"%9%T!<%I!&%9%1!<%H!"$=$NB>?e1K$N9bHt9~$+$i!"Ln5e!"3QNO!"=@F;!"7uF;!"%F%K%9!"%4%k%U$K;j$k$$$m$$$m$J%9%]!<%D$d5;!J%o%6!K$NCf$N0l@#$7$?>.$5$JF0$-$N0l$D0l$D$r!V2?8N$=$&$9$k$N$+!W!"!V$b$C$H$$$$J}K!$O$J$$$N$+!W$H$$$&$3$H$G!"$$$m$$$m$d$C$F$_$?$j!"$?$a$7$F$_$?$j$7$F9M$($D$E$1$?7k2L!"$^$:$O$3$l$J$i$H$$$&$3$H$G!"$o$+$C$?$3$H!"<+?.$,$b$F$?$3$H$r!"=qJ*$K=q$-$"$i$o$7$?$N$,$3$NK¥$G$"$k!#
　その意味でこれは私にとってプラティクの知探究の第一弾といえる。
　残念なことに、せっかくのこの?¥!"4N?4$N%9%]!<%D3&$G$b!"$=$NF;$N%;%s%;%$C#!J%9%]!<%D0e3X$HcJ$9$k!K$K$bA4$/$H$$$C$F$$$$Dx$KL5;k$5$l$F$$$k!#AG?M$,2?$r$$$&$+$H$$$&$o$1$G$"$k!#L^O@0lHL$N?M$K$*$$$F$O%O%J$+$iLdBj$K$7$J$$!#AjJQ$o$i$:$*$+$7$JJb$-J}$r$7$F!"$d$l9x$,$$$?$$$NI($K?e$,$?$^$C$?$N$H!"6r$K$b$D$+$L$3$H$r$/$j$+$($7!"%`%6%`%6$d$V0e 　我々がいかに日常の「身体づかい」に無?¥Ce!"L54X?4$+$H$$$&$3$H$G!"$3$l$G$O$;$C$+$/$N!V%¥%G%#!<%^%M%8%a%s%H!W$b$I$&$7$h$&$b$J$$!#
　というわけで、せっかくのこの?¥!"%Y%9%H%;%i!<$K$J$i$J$+$C$?$,!"$@$+$i$H$$$C$F<+?.$r$J$/$7$?$o$1$G$O$J$$!#$=$l$I$3$m$+1W!9<+?.$r6/$a!":#$b$C$F$=$NC55f$r$D$E$1$F$$$k!#
　いまからでもおそくない。心ある人は今一度この?¥$r$8$C$/$jFI$_D>$7!"$=$3$K=q$+$l$F$$$k$3$H$r!V$@$^$5$l$?!W$H;W$C$F!"$=$NDL$jC$(!"?HBNA4BN$,2?$H$b$$$($L$$$$46$8$K$J$kH&$J$N$G$"$k!#
　かつてドイツにいったとき、通訳かたがた話相手として来てもらった日?¥?M$NN13X@8$K;6Jb$+$?$,$?@5$7$$Jb$-J}$r65$($?$H$3$m!"$7$P$i$/$7$F!V?HBN$,Bg$-$/$J$C$?$h$&$J5$$,$7$^$7$?!W$H$$$$$@$7$?!#:#$^$G$N%;%+%;%+$7$?L/$JJb$-J}$K$h$C$F2?$H$J$/46$8$F$$$?H¥6~46!"$_$8$a46$,2d$+$K$J$/$J$C$?$H$$$&$3$H$G!"$=$&$$$C$?$H$-$N$=$NN13X@8$N2?$H$b@2$l$d$+$J4i$,:#$G$bK:$l$i$l$J$$!#
　身体の正しい動かし方による「身体的実感」とはそういうものなのである。
　その意味で、彼は、一つの大いなるプラティクの知を会得したといえる。
　「知」はすべて何らかのブラック?¥%C%/%9$NC55f$+$i$O$8$^$k!#?M4V$N?HBN$NF0$-$b$=$l$J$j$N%V%i%C%/%¥%C%/%9$G$"$k!#$=$l$@$1$K1|$b?<$1$l$P!"6=L#$H4X?4$N%?%M$O$D$-$J$$!#
　その謎を一つ一つ解き明かし、その中から「知」を一つ一つひろい出すこと、そこに「プラティクの知探究」の無上の喜びがある。
　そういう「喜」を「身体づかい」についてでなく、仕事やあそびの中での大小無数の小実践、プラティクの一つ一つについて今一度たしかめ直したいものである。

　プラティクと「位置感情」

　たとえば、ものごとをうまくやりとげるためには思考や行動が適切でなければならないことはいうまでもないが、これ以上に感情が常に前向きで明るいということが大切である。
　だが感情というととかく、ゴールを?¥$,$1$F$N!VC#@.46>p!W$@$1$,A4$F$H$$$&$3$H$K$J$j$,$A$G$"$k$,!"$=$l$@$1$,p$G$O$J$$!#
　たとえば、やろうとすること、あるいは実践ということで操作しようとする「もの」が好きかきらいかという意味での「対象感情」という感情が実践の上で大いにものをいう。それが「いやいや」では心がいかに「達成感情」だけでカンカンになっていたところで、所詮はうまくはいかないのである。
　また、スタートからゴールまでの一連の実践（プラクシス）の中でおこる「位置感情」というのがある。途中でうまくいった、次はもっと頑張ろう、あるいはその逆に失敗した、いやになった、やめてしまいたいという、一連の実践の中で、その時、その場でおこる感情のことである。
　こういった感情は実践が長丁場になればなる程おこりやすく、またその時々の状況によって起伏もはげしくなるものである。
　その起伏をそのときまかせにしないで、常に前向きのプラスの形で維持していくことはきわめてむずかしいのであって、そうであって、ものごとはうまくいくというものなのであるが、このこともプラティクと大いに関係があることなのである。
　何故なら途中でいやになるということは、「小実践」としての「ドウ」が、まづいか、間違っているからである。だからことが思うように進まないで、いやになってしまうのである。その「ドウ」が適切であり、間違っていなければ、決していやになったという気にはならない筈なのである。あるいはかりに間違っていてもそれが間違いであることに気づき、どうしたら正しい「ドウ」に改められるかがわかっていたら、間違ったことによって一時的にガックリしても、すぐ気分的に立ち直れる筈なのである。
　一番いけないのは、?¥E*C#@.$@$1$K?4$,$"$;$C$F!"$=$N2aDx$H$7$F$N%W%i%F%#%/$r$$$$2C8:$K$7$F!"$=$l$K$D$$$FKX$IL5H?>J$J$^$^!"$3$H$r6/0z$K2!$7?J$a$h$&$H$9$k$3$H$G$"$k!#$=$s$J$3$H$@$+$i0l@#$7$? 　その意味で、「位置感情」はプラクシスよりプラティクと大いに関係がある。
　だが「位置感情」が常に前向きだからといって必ずしも安心できない。何故なら「位置感情」をプラスにもっていくためには、プラティクの当否が必ずしも関係しているとは限らないからである。たとえば、プラティクはいい加減でも、?¥?M$N5$$,!"K¥Mh$N%W%i%/%7%90J30$N$3$H$K5[$$$h$;$i$l$F!"$=$l$,0U30$H%W%i%/%7%9$N3h@-2=$K$D$J$,$C$F$$$k$3$H$,>/$J$/$J$$$+$i$G$"$k!#$3$&$$$&$N$r0lHL$K!VF;Ap$r6t$&!W$H$$$&!#$5$-$K!"%W%i%/%7%9$+$i30$l$?%W%i%F%#%/$N$3$H$rF;Ap$H$$$C$?$,!"$=$NF;Ap$G$"$k!#
　だがこれはいかに活性的であっても、それが?¥Mh$N%W%i%F%#%/$NEvH]$H$N4X78$,@Z$l$F$$$k$H$$$&$3$H$G$O!"C&@~$G$"$C$F!"$=$s$J$3$H$G$O$?$H$(0LCV46>p$O%W%i%9$G$"$C$F$b$"$F$K$J$i$J$$!#F;Ap$N@Z$lL¥$,1o$N@Z$lL¥$G!"$$$D$+%,%C%/%j$H$$$&$3$H$K$J$k!#
　「位置感情」をプラティクとの関係で常にプラスに前向きに継続していくためには、何といっても実践する?¥?M$,<+J,$N%W%i%F%#%/$K$D$$$F$7$C$+$j$H$7$??.G0$r$b$C$F$$$J$1$P$J$i$J$$$o$1$@$,$3$l$,$$$&$Y$/$7$F$`$:$+$7$$$3$H$J$N$G$"$k!#2?8N$J$i%W%i%F%#%/$H$$$&$b$N$O!"$5$-$K2?EY$b$$$C$?$h$&$K$=$N$H$-$I$-$N>u67$K$h$C$F@8$:$k?HBN$N46@-E*H=CG$K$b$H$E$/F0:n$dBP1~$G$"$C$F!"F,$G$O$$$A$$$A$*$¥$($F$O$*$l$J$$$b$N$@$+$i$G$"$k!#M>DxK¥?M$,$=$N5$$K$J$C$F$$$J$$8B$j!"%W%i%F%#%/$K$D$$$F<+?.$d?.G0$r$b$D$H$$$&$3$H$O$`$:$+$7$$$N$G$"$k!#

　よく観てほめてやること

　だからプラティクとの関係で?¥?M$N0LCV46>p$r>o$KA08~$-$K$7$F$$$+$;$k$?$a$K$O%O%?$N$b$N$,6(NO$7$F$d$k$3$H$,I,MW$H$$$&$3$H$K$J$k!#$?$H$($P%O%?$N$b$N$,K¥?M$N$d$C$F$$$k$3$H$rCm0U$7$F8+$F$$$F$d$j!"$o$k$$$H$3$m$rD>$9$h$&$KCm0U$7$F$d$k!#$H$/$KBg;v$J$3$H$O>/$7$G$b$$$$$3$H$r$7$?>l9g$K$O$[$a$F$d$k$3$H$G$"$k!#$o$k$$$H$3$m$rCm0U$9$k$3$H$bBg;v$@$,!"$3$l$@$1$@$HK¥?M$,0E$/$J$k!#$^$?!"$o$k$$$+$i$H$$$C$FCm0U$7$@$7$?$i%-%j$,$J$$!#2?$7$m%W%i%F%#%/$=$N$b$N$,$5$-$K$b$$$C$?$h$&$K%O%C%-%jDj7A2=$7$($J$$!J$@$+$i!V5,Dx!W$H$$$&$3$H$G=hM}$9$k$h$j;EJ}$,$J$$$H$$$&$3$H$K$J$k!K!"$O$C$-$j$7$F$$$k$h$&$G$O$C$-$j$7$F$$$J$$F@BN$N$7$l$J$$!V%I%&!W$J$N$G$"$k!#$@$+$i$=$l$KJ86g$r$D$1$@$7$?$i$=$l$3$=%-%j$,$J$$$3$H$K$J$k$o$1$@!#$=$s$J$3$H$K$J$k0L$J$i!"$o$k$$$H$3$m$K$OB?>/L¥$r$D$V$C$F$b!"$=$N!V%I%/!W$NCf$N>/$7$G$b!V$$$$$H$3$m!W$KL¥$r$D$1$?J}$,%O%?$N$b$N$H$7$F$b5$$,3Z$K$J$kH&$G$"$k!#$^$?$=$l$r$[$a$F$d$l$P!"$[$a$i$l$?K¥?M$b5$$r$h$/$7!"$d$k5$$r=P$9!J0LCV46>p$r%W%i%9$K$9$k!K$H$$$&$b$N$G$"$k!#
　だがいずれにせよ、観察ということが大事であって、それがいい加減では、ほめたがほめたにならないのである。ショットの瞬間、タマの行方もロクに見ないで「ナイス・ショット」。そんなお義理のほめ方ではほめられた方もいい感じにはなれないのである。
　とくに、上にたって人をつかう立場にあるもの程、下の人達のプラティクへの深い観察力を必要とする。
　そういう心の暖かい、親切な上司の下で働く以上、どんな人でも、プラティクということで少々失敗しても、それによってやる気をなくすということ、位置感情をマイナスにするということにはならない筈なのである。
　長丁場のプラクシスでは「位置感情」が大事であり、それを常に前向きのプラスに維持していくために、?¥?M$@$1$G$J$/%O%?$N$b$N!"$H$j$o$1%j!<%@!<$,!"$=$N>.$5$J!V%I%&!W$K==J,Cm0U$7$J$1$l$P$J$i$J$$$H$$$&$3$H$G!"$3$l$b0l$D$N!V%W%i%F%#%/$NCN!W$X$NC55a$NF;$H$7$FK:$l$F$J$i$J$$Bg;v$J$3$H$@$H$$$&$3$H$G$"$k!#

　生きる理想は「快適」

　人間でも、動物でも、およそ生きるものにとっての理想は「快適」ということである。
　「快適」（カンファタブル）ということは「のびやかさ」、「すこやかさ」ということである。そういう「のびやかさ」、「すこやかさ」をもった生き方をすること、それが人間だけでなく動植物をもふくめて、およそこの世の中で生きているものにとっての理想だということである。
　それが生きるものにとっての理想は「快適」ということであるということの意味である。
　ここでいう「快適」は「快楽」ではない。「快楽」（プレジュアー、アメニティ）とは広い意味での官能的欲求の充足をもとめることである。
　こういう「快楽」をおいもとめるということは人間だけでなく他の動物にもあるわけだが（その質や度合いの差は別にして）、これは、生きるものにとっての普遍的に共通なる理想にはならない。
　何故なら、一口に官能的欲求の充足をもとめるといっても、その欲求の質や程度が、人によって、あるいは動物の種によってさまざまにわかれるからである。また、同じ人でも、同じ動物でも、時により場合によって、あるいは年数という時間的経過によって、そのありようを異にするからである。
　だから「快楽」ということは生きるうえで無視できない大きなインパクトであることは間違いではないとして、それは決して、生きるものの共通?¥I8$?$jF@$J$$$N$G$"$k!#
　動物の場合はともかくとして、我々人間は、生きる?¥I8$H$$$&$3$H$G!"$H$+$/$3$N!V2wE,!W$H!V2w3Z!W$H$r:.F1$7$,$A$G$"$k!#

　「清貧論」に欠けているもの

　たとえば、生きるとは幸せに生きることだといわれる。その「幸せ」が曲者で、そこには「快適」と「快楽」との二つが入りまじっている。だから、さてとなると「幸せ」とは一体何なのかわからなくなる。
　ある人は「幸せ」とは「快楽」を追い求めることと思い、ひたすら「快楽」めざして生きているのはいいとしてもその「快楽」が行きすぎてかえって人生そのものを滅茶滅茶にしてしまうということが少なくない。
　そうかと思うと「快楽」は生活の敵だとして、ひたすら「快楽」に?¥$r$D$V$k$3$H$,9,$;$NES$@$H@b$/!"6XM_ 　一体どちらが?¥Ev$J$N$+$H$$$&$o$1$@$,!"$3$&$$$&0l8+L7=b$7$?$h$&$J!V9,J!O@!W$,@N$+$i:#$K$$$?$k$^$G$K@d$($J$$$N$O!"!V9,$;!W$N0l$D$NB&LL$G$"$k!V2w3Z!W$NJ}$K$@$1L¥$,$`$1$i$l$F$$$F!":#0l$D$NB&LL$G$"$k!V2wE,!W$H$$$&$3$H$,L¥$KF~$C$F$$$J$$$+$i$G$"$k!#$"$k$$$O%O%J$+$i$3$NFs$D$rF1$8$3$H$N$h$&$K8+$F$$$k$+$i$G$"$k!#
　たとえば、「快楽」セーブの「禁欲論」、「清貧論」はいいとして、そのうらにある生の理想としての「快適」ということが見おとされていたのでは、それこそ人生面白くない筈なのである。
　また、快楽を追うのはいいとして、その結果、生の?¥E*$G$"$k!V2wE,!W$^$GGK2u$7$F$7$^$C$?$N$G$OLLGr$/$J$$$H$$$&$3$H$G$"$k!#

　斗いなくして快適なし

　それなら「快適」とは何か。それはさきにもいったように「のびやかさ」、「すこやかさ」ということである。
　いいかえると自由で健全な人生をおくることである。
　問題はここでいう、自由とか健全ということの意味で、それが、とかく、個人的な官能的欲求との関係でとらえられやすいのである。たとえば「自由」とはしたいことをすることだ、「健全」とは自分さえ無事息災であればいいという風に。
　だから「快適」はいとも簡単に「快楽」にすりかえられてしまうのである。
　だが、ここでいう「自由」とか「健全」とは、そんな風に官能的欲求の問題にすりかえられる程に甘いものではないのである。
　そこには生きるということの根源に直結した、もっと深く、強い意味があるのである。
　たとえば、ここでいう「自由」とは何らかの抵抗を排除していくということである。同じく「健全」とは、「健全」を損なう何かと斗い、「健全」を守っていくということなのである。
　つまり、何かと「斗う」（排除あるいは防御）ということから、「のびやかさ」、「すこやかさ」、つまり快適な人生が保証される、そういう意味での「自由」であり「健全」であるということである。
　何で、そういうことになるかというと、そういう「斗い」なくして我々はこの世を生きていけないからである。何故なら世の中は人でも、「もの」でも、自然でも、我々の生を拒み、あるいは生の邪魔をする意地悪や障害物で一杯だからである。
　そもそもこの地球からして、もともと人間や動物を生かすために出来ているのではないのである。たまたま、人間や動物がその上に住んでいるだけのことなのである。
　だから、人間や動物が、その住み方に十分注意しないと、地球や環境に拒まれたり意地悪されたりしてその生存そのものがなりたたなくなるということになる。

　動物の斗い方、人間の斗い方

　この場合、動物は、環境への適合というやり方で、その生存を確保する。
　これに対して人類は、あるときは環境に適合するが、あるときは逆に環境に切りこみそれを支配し、つくりかえるという「二足のわらじ」をはいて、その生存を確保する。
　いずれも生きるための斗いであり、生きるためにチエのあらわれであって、ただその斗い方が動物（だけでなく植物をもふくめて）と人間とではかなりちがうというだけのことである。
　たとえば動植物の斗いは環境に対するソフトな形での斗い、抵抗排除というより身の安全を守ると言う形での斗いであるのに対して、人間の斗いにはソフトとハードの両面があり、それもハードとしての斗い、環境に対して積極的かつ排除的な斗いの方が主軸となっているという風に。
　しかも人間の場合、斗いの相手は環境や自然だけでなく、「もの」や「人間」も斗いの相手になる。何故なら、これらが個々の人間が生きていくうえで意地悪したり、邪魔したりしていることが多いからである。
　とくに人が問題で「リヴァイアサン」のホッブスではないが人間は「互いに狼」なのである。あるいはビスマルクやカール・シュミットではないが「政治とは誰が敵で誰が味方かをはっきりさせる」ことなのである。
　つまり、人間は互いに争いながら生きているということで、このことは人それぞれが互いに相手に何らかの形で意地悪したり、邪魔したりしているということで、こういうことは、動物の種の世界（同種の動物の世界）ではあり得ない。人間だけの現象なのである。
　何で人間だけがそうなるのか、ということになると、そこには一口にはいえないいろいろ複雑な要因がからんでいるため、ここでは問題にしないことにして、ここで大事なこととして、人間が生きていくための邪魔物は決して自然や環境だけでないということを確認しておくだけにとどめる。
　「もの」が邪魔物になることはいうまでもない。もともと「もの」とは人間が快適な生活をおくるためにつくり出されたものであるが、そのつかい方を一つまちがえると、とんでもない危険な凶器になったり、生活をおびやかす邪魔物になるのである。
　要するに、人間が生きていくためには自然や環境と斗わねばならない。人と人とが互いに斗わねばならない。「もの」とも斗わねばならない、ということで、これらの一連の斗いの中から「のびやかさ」としての自由と「すこやかさ」としての安全の道が拓かれていく。「快適さ」の追求とはそういうことだということである。
　つまり、「斗い」なくして「快適」なしということである。あるいは、かりに斗ったとしてもその「斗い方」が不適切でいい加減だと「快適」は保証されないということである。そういう場合は生きることそのものが不自由かつ危険で一杯ということになる。快適の反対は「きゅうくつ」、「おそろしい」ということなのである。

　三つの邪魔物

　だが、ここで注意しておかねばならないことは自然や「もの」や人が生活の邪魔をするといって、その邪魔のしかたは必ずしも敵意むきだしで刃向かってくることだけとは限らないということである。面と向かって刃向かってこないでも邪魔になっていることがある。
　たとえば道路のどまん中に岩がころがりこんででんと居据っている。そのため車が通れないというような場合。あるいは外へ出たいのだが、ドアがしまっていて出られないというような場合。あるいは、相手がものをいうまいとして口を貝のようにとざしてしまっているような場合、等々。これらはいずれも面と向かっては刃向かっていないが、それなりにこちらに対して邪魔しているわけである。
　こういう邪魔物のことを面と向かって刃向かってくる「敵対型」邪魔物に対して「静止型」邪魔物という。
　同じく、「自然法則型」邪魔物というのもある。たとえば「もの」が引力の法則によって、こちらの意図に反した動きをする場合である。「もの」を静止させ固定しておきたいのにころがっていく、くずれだすような場合、外からの衝撃や、内部でのバランスの一寸した変化で、「もの」が傾いたり倒れたりするような場合。車のブレーキがきかず、オーバーランするような場合、等々がそれである。
　同じことは人間についてもいえる。
　たとえば人間は利害により、感情によりいろいろなうごきをするものであって、それをとめさせたり、別の動きにのせたりすることはきわめてむずかしいことなのである。とくに、人々が時代の流れにのって走り出したときには少々のことでは「止め」がきかない。いずれもその動きは、人間社会の中で何らかの法則性をもった動き（自然社会のそれとちがって、それが正しいかどうかは別として）だからである。
　だから、かりにその邪魔のしかたが敵対的でなくとも、そういうことでこちらの意図に反するようなことがおこったら、いずれもこれらを邪魔物として排除するか、邪魔させないように何らかの手を打つとか、何かをしなければならない。これも「斗い」のうちであって、その意味でここでいう「斗い」とはきわめて広い意味をふくんでの「斗い」なのである。逆にいうとそれだけ邪魔物が多いということでもある。

　「斗い」とは「抵抗への抵抗」

　また、その意味でここでいう「斗い」のことを「抵抗」（レジスタンス）といってもいい。もちろん「抵抗への抵抗」という意味での「抵抗」である。はじめの抵抗とはこちらの邪魔をしているということでの「抵抗」である。それを排除したり抵抗させないようにもっていくためのチエと力、それがいわゆる「斗い」であり、ここでいう「抵抗への抵抗」である。
　あるいは、それが実践としての「ドウ」そのものだということである。
　さきに何度も、生きていくためには常に何かしなければならない、何らかの実践ということがあってはじめて、我々は生きていくことが出来るのだといったことが、その「ドウ」とか「実践」とは、我々が何らかの抵抗（邪魔物）に対して抵抗したいと思うからこその「ドウ」であり、実践なのである。
　かりに我々が生きていくうえで、それに逆らう何の抵抗も邪魔もなければ、我々は何もしなくともいい筈なのである。生きていくために何かをしなければならないということは、それをしないと我々の生活がうまくいかないからなのであって、そこに我々の生活がうまくいくのを邪魔する何かがあるからである。
　つまり、「何かをする」とは「何かに抵抗する」ということであって、生きていくことがそういう大小無数な「ドウ」の連続であるということは、人生そのものが大小無数の抵抗の連続であるということなのである。

　生とは抵抗すること

　いいかえると「生とは抵抗」であるということで、たとえばディルタイの「生の哲学」でいう「抵抗」の意味もここにある。
　ディルタイによると「ドアを開けるのはドアが閉まっている（出ていくのを邪魔している）から」なのである。人生も同じように生の前途に立ちはだかる大小無数のドアを開けていかなければならない。その意味で「人生とは抵抗そのもの」なのである。
　たとえば、我々が説得ということに心をくだくのは、相手が説得されまいと抵抗しているからである。つまり相手の心の中のドアを開かせるために説得ということが必要になってくるのである。
　あるいは我々が互いに親切にしあうことが必要なのは、そうすることによってお互いに相手の心のなかの抵抗を和らげることができるからである。

　笑顔は何故必要か

　このことと関連して面白いことはアメリカ人は見知らぬ相手に対してつとめて笑顔で対応しようとつとめていることである。これは、そうすることによって互いの敵愾心や不信感を和らげようとしているからである。見知らぬ人間同士が?¥$9$k$H$$$&$3$H$O$*8_$$$KIT5$L#$G$3$o$$$3$H$G$"$k!#$3$o$$$+$i$H$$$C$F8_$$$K$3$o$$4i$r$7$F$$$?$N$G$O$^$9$^$9$3$o$/$J$k!#$=$3$G$3$o$$4i$r$9$k$+$o$j$K>P4i$K$J$k!#$=$&$9$k$3$H$K$h$C$F!"<+B>$H$b$K$3$o$5$,I92r$7$F$$$/$H$$$&$3$H$G!"$=$N0UL#$G>P4i$bDq93GS=|$N%A%($N0l$D$J$N$G$"$k!#
　日?¥?M$O5U$G!">P4i$H$O?F$7$$$b$NF1;V$G$N?F0&$N$"$i$o$l$H;W$C$F$$$k!#$@$+$i?F$7$$$b$NF1;N$OBg$$$K%K%3%K%3$7$F$$$k$,!"0l$?$S8+CN$i$L?M$K=P2q$&$H9z$A%K%3%K%3$,$I$3$+$X$$$C$F%`%C%D%j!"%B%m%j$H$$$&$3$H$K$J$k!#
　もちろんニコニコには親愛の情のあらわれという意味もあるが、日?¥?M$O>P4i$N0UL#$r$=$l$@$1$H;W$C$F!">P4i$K$O8+CN$i$L$b$NF1;N$NDq93GS=|$H$$$&!"$I$A$i$+$H$$$&$HA0e$KBg$-$J

　文明の意味

　このように我々が生きていくための「ドウ」には必ず何らかの形での「抵抗」という意味がある。
　逆にいうと、その「抵抗」のしかたがいいかわるいか、上手か下手かによって、人生の快適度は定まるということである。
　また、ここでいう「ドウ」とか「実践」にはさきにもいった「大実践」としてのプラクシスと「小実践」としてのプラティクの二つを含む。いずれも、それなりの「抵抗」である。なかでもプラティクとしての「抵抗」が大事で、これがいい加減ではそれこそヒマラヤにはの?¥$l$J$$!#BgCO$N>e$GB-5v$,$"$V$J$$$H$$$&$3$H$K$J$k!#
　また、「抵抗」のいいところは、何が邪魔物で、どうしたらそれを排除できるか、あるいは邪魔させないようにできるかについての対象物も、抵抗のハウツウも、人それぞれの心理や欲求のちがいを超えてきわめて普遍的でわかりやすいということである。自分にとっての邪魔物は他人にとっても邪魔物なのである。従って、それへの抵抗も個々の人々が、その都度自分で考えるだけでなく、みんなでチエを出し合って考えていけるということになる。
　たとえば、文化や文明とはそういう意味での抵抗のチエの産物なのである。
　文化とはさきにもいったように、ものや人や情報の「つかいこなし」（ユースイン）のチエの集積であるといったが、このことは「もの」や「人」や「情報」の抵抗に対する抵抗のチエの集積ということなのである。
　この点、文明となるともっとはっきりする。文明とは人間の生活の快適ということを眞向から指向してのチエの集積だからである。たとえば文明によっていろいろな「もの」が開発される。いろいろな新しい生活様式がつくられていく。いずれも我々の生活を快適ならしめるためのチエの所産であって、そのことは、それだけ大がかりな形で、システムとして、世の中の抵抗排除のチエがディヴェロップされているということなのである。
　ただその方向が、文化がとかく地域主義で閉ざされがちであるのに対して、超地域的、普遍的な形での快適追求に向けられているということで同じ抵抗のチエの集積でも文化のそれとそのありようを異にしているというだけのことである。
　また、その快適追求の方向が余りにも普遍的なそれを追いもとめすぎるため、「もの」や、「人」や情報を抵抗排除のためにきめこまかく「つかいこなす」という細心のチエの方がとかく無視されたり、おざなりにされやすいというマイナスが避けられないということが、文明にはあるというだけのことである。

　快楽は文明を滅?¥$9

　これが快適でなく快楽の追求ということになると、文明では手に負えないということになる。
　なるほど欲求追求のうらには欲求に対する抑圧の排除ということがあり、その意味では欲求追求も抵抗のうちということになるわけだが、この場合、何をもって抑圧とみなすかは、さきの邪魔物と比べて、画一的、普遍的とはとらえにくい。何しろ抑圧の相手は人々の官能的欲求であり、好みであり、価値観といったわけのわからぬ代物なのである。だから抑圧排除のために集団があるいはシステムが働くということは先ず考えられない。そのために文明がおこるということも考えられない。集団や文明の世話にならなくとも人々は快楽をもとめようとすれば、それなりにいつでもどこでももとめられるのである。
　むしろ、快適のための文明が、快楽によってくいつぶされるという危険の方が大きいのである。その意味で快楽と文明とは両立しない。文明の敵は快楽であるということになる。昔からいくつかの文明が栄えて滅びたのはこのためである。旧約の「ソドムとゴモラ」の伝説がこのことを象徴している。
　つまり、快適の追求は普遍化されやすいし、また普遍化しうるが、快楽の追求は普遍化できない、逆に個別にバラバラになりやすいということで、このことは今日の文明（工業化文明）のありようと動向を占ううえできわめて大事なことといえる。

　「あつかう」ということの意味

　生きるために抵抗するとは「もの」を「あつかう」ことである。「あつかう」とは、「もの」をこちらの思うようにしむけることである。
　「もの」とはさきの自然や環境についていったのと同じく、元来が我々人類のために存在するものではないのである。「もの」にはものそのものとしての独自の姿形や構造があって、それが、そのまま人間に役立つようには出来ていないのである。
　いいかえると、「もの」はその?¥Mh$N;Q7A!"9=B$$K$*$$$F!"?M4V$NMxMQ$r5qH]$7$F$$$k!"$=$&$$$&$3$H$GDq93$7$F$$$k$H$$$&$3$H$J$N$G$"$k!#
　だから「もの」を利用しようと思うなら「もの」のオモテやウラにある何らかの抵抗を排除しなければならないということになる。
　たとえば、どんなものにも一長一短がある。何をもって長と見、何をもって短と見るかは「もの」の利用?¥E*$K$h$k$o$1$@$,!"$=$l$J$i$=$l$G!VD9!W$r@8$+$7!"!VC;!W$r;&$9!"$"$k$$$O2!$5$(9~$`$3$H$r9M$($k!"$D$^$j!V$b$N!W$NDq93$KBP$9$k!VDq93!W$N9)IW$r$7$J$1$l$P$J$i$J$$$o$1$@!#
　問題はその「抵抗」（抵抗への抵抗）のしかたで、それには力づくでのハードなやり方と、力よりチエをつかってのソフトなやり方との二つのやり方があって、その間に、ハード、ソフトをふくめていろいろなやり方が考えられる。
　それを出来るだけハードでなくソフトに近いやり方でやってのけることがのぞましい。何故かというと、でないと「短」を殺すのはいいとして、そのついでに「長」まで殺したり、損なったりすることになるからである。俗にいう「角を矯めて牛を殺す」というわけでせっかくの抵抗が仇となって、それこそ元も子もなくしてしまうことになるからである。そんなことにならないよう、出来るだけソフトな方法を工夫しそれを「もの」に対してやってみる。
　それを「あつかう」というのである。

　ものづくりにおける「加工」の意味

　そういう「もの」についての「あつかい」の中で最も重要なのは、「もの」をつくる場合である。
　「もの」をつくるとは、現にある「もの」（自然のもの）をつかって、現に「ない」ものをつくり出すことである。いいかえると何等かの素材を加工することである。その加工がここでいう「あつかい」ということになるわけだ。何故なら、素材はそのままでは、それこそ「ものにはならない」からである。
　そこで、いろいろな加工のしかたを考え、工夫するわけだが、その加工の一つ一つが「抵抗」のチエの産物なのである。
　だから、素材の質によって、またつくろうとする「もの」の條件によって、いろいろな加工のしかたが工夫され、またその加工は大ざっぱな加工から、よりきめのこまかい小さな加工に細分化されていくということになる。
　これをさきの「大実践」（プラクシス）と「小実践」（プラティク）の理論にあてはめてみると、「もの」を「ものにする」ための概略の試みが「大実践」、そのための「加工」が「小実践」ということになる。あるいは「大実践」とは「大抵抗」、「小実践」とは「小抵抗」であるといってもいい。「加工」とは「ものづくり」という「大実践」としてのプラクシスを実現していくための「小抵抗」としての「プラティク」であるということである。
　一般に「加工」はものづくりの手段であるとみなされているが、実践論からいうとそれは単に手段であるのでなく、それなりにプラティクとしての実践なのである。
　ここが肝心なところで、何故それが肝心かというと、ここのところをはっきりさせておかないと「加工」ということの?¥Ev$N0UL#$,$o$+$i$J$/$J$k$+$i$G$"$k!#$9$J$o$A!"!V2C9)!W$K$*$1$kDq93$N0UL#$,!#
　「加工」を単なる「ものづくり」の手段と思うと、それは?¥E*$N$?$a$N 　たしかに現実的には、「加工」はそういう形で、たとえば一次加工ー二次加工ー三次加工といった形で進められていくわけだが、だからといって余りこういう考え方に狎れすぎると、「加工」そのものについての考え方も、そのやり方も安易な方向、簡略化の方向にそれてしまいそうである。
　手段である以上、できるだけこれを合理化し、簡略化しようということになるのは当然のことだからである。
　だが「加工」とは手段である前に、先ず「実践」（プラティク）なのである。何のための「実践」かというと「もの」の抵抗を排除するための「実践」なのであり、またその意味において、「加工」そのものが「もの」に対する「あつかい」の大事な一コマ一コマなのである。
　だから、その「実践」の一コマ一コマを見直したり、考え直したり、あるいはもっといいたしかな抵抗排除の方法を考えることはいいとして、その見直しをかりにも合理化というような安易な考え方にゲタをあづけるような、いい加減で軽率なことは許されない筈なのである。そんなことでは「加工」が抵抗排除するどころか、逆に「もの」の側からの抵抗に負けてしまうということになりかねないのである。
　そういうことにならないためには、「加工」の意味を単なる手段である前に、先ず「実践」であるということで、平生からはっきり頭にきざみこんでおくことが必要なのである。

　暴力型「加工」の見直し

　いいかえると「ものづくり」の確信とは単なる手段やプロセスの革新ではなく、いくつかのプラティクをふくめての「もののあつかい方」の革新であるということである。
　この点、いわゆる近代的な生産形態のもとでの「ものづくり」は、手段やプロセスという面ではきわめて合理化され精緻化されている反面、全体として「ものあつかい」が粗雑で乱暴になっているようである。資?¥$NO@M}$K$h$k7P:Q@-$H@8;:@-$N05NO$K$h$k$b$N$G!"$3$s$J$3$H$G$O!"$4$/Dc$$%l%Y%k$G$N!V$b$N$E$/$j!W$J$i$H$b$+$/!">/$7$G$b%l%Y%k$N9b$$!"3W?7E*$J!V$b$N$E$/$j!W$J$I$H$F$b9M$($i$l$J$$$N$G$"$k!#
　とくに、材料についての技術的掘り下げ（長短割り出しのための）が甘く、材料が単なる新しさ、珍しさによって、あるいはコスト主義によって安易につかわれているためのマイナスが?¥N)$D!#
　また、新しい材料をつかうのはいいとして、その「処理」（事前、過程内、事後のそれをふくめて）が経済性と生産性の圧力のもとで、安易にかつ消極的に「処理されている」ためのマイナスが?¥N)$D!#
　金属加工でいうと表面処理、熱処理その他の処理である。
　また、加工工程の中に組みこまれている鉄板を曲げたり、つないだりという作業も、それはそれなりの「処理」であって単なる工作的な作業ではないのであるが、一般にはそういう認識が極めて乏しい。
　こんなことでは、「いいもの」をつくるどころか、逆に材料という「もの」に負けてしまいそうである。
　何故なら、今日では資源とエネルギー両面での制約によって、昔のようなぜいたくな「ものづかい」が出来にくくなっているからである。
　資源が乏しくなるということは、材料のもとである「もの」の質がわるくなるということである。ということはそれだけ「ものづくり」に対する「もの」の側からの「抵抗」が強くなるということである。だから、それに対してつくる側が「抵抗」していくためには、今までのような甘い「ものあつかい」を見直して、「抵抗」ということでより強力な、よりたしかな方法を見つけださなければ、とてもじゃないがやっていけないということになる筈なのである。
　エネルギーが豊富なときなら、ことは簡単である。「もの」の抵抗排除のために、バンバン熱をかけ、圧力をかければいいからである。
　だが、今日ではそんなぜいたくなことは許されない。エネルギー自体が、資源と同じくきびしい制約の下にさらされており、万事省エネ型でやっていかなければならないのである。つまり、高熱でなく低熱で、高圧でなく低圧で、すなわちこれまでのどちらかというと限りなくハードに近いやり方でなく、限りなくソフトに近いやり方へ、「ものあつかい」そのもの、とりわけ処理そのものを百八十度変えていかなければならないのである。
　今までの「ものあつかい」はどちらかというと高熱、高圧になりすぎているということで、きわめて暴力的である。これからは、そういう「暴力的なやり方」でなく、もっと「やさしく、ていねいなやり方」を考えなければならないということで、そこのところを徹底的につめていくためには、「加工」ということをプラティク（実践）という観点からとらえ直していくことが、どうしても必要になってくるのである。

　「加工」は「迂回」のチエの産物

　次に「加工」ということで今一つ大事なことは、そのこと自体が「迂回」のチエの産物であるということである。「迂回」とは?¥E*$KBP$7$F0lD>@~$K%"%W%m!<%A$7$h$&$H$9$k$N$G$J$/!"L¥E*$KBP$7$F4V@¥E*$J2?$+$r@_Dj$7$F!"$=$l$K$h$C$FL¥E*$K%"%W%m!<%A$7$h$&$H$9$k$3$H$G$"$j!"A0@¥E*%"%W%m!<%A!W$KBP$7$F!V4V@¥E*%"%W%m!<%A!W$H$$$C$F$b$$$$!#B/$K$$$&!V5^$,$P$^$o$l!W$G2?8N$=$&$$$&$3$H$,I,MW$+$H$$$&$H!"$=$&$7$J$$8B$j!"Dq93GS=|$H$$$&$3$H$O$H$F$b=PMh$k$3$H$G$O$J$$$+$i$G$"$k!#$?$H$($P73;vE*@oAh$G$b1*2s$7$F$N!V4V@¥%"%W%m!<%A!W$,4pK¥$G$"$C$FM>Dx$N$3$H$G$J$$8B$j!VD>@¥%"%W%m!<%A!W$O$7$J$$$3$H$,86B'$K$J$C$F$$$k!#
　これが「抵抗排除」でなくて?¥MhL5Dq93$N$b$N$rA@$&$N$J$i4V@¥%"%W%m!<%A$J$I$H$$$C$?$b$C$F$^$o$C$?$3$H$O$9$kI,MW$,$J$$!#D>@¥%"%W%m!<%A$G$$$$$o$1$@!#
　「もの」についても同じで、その辺におちているもの、現に「ある」ものを単にひろってきて利用するするということであれば「直?¥%"%W%m!<%A!W$G$$$$$o$1$@!#$^$?!"$=$N$?$a$K2?$i$+$NF;6q$,I,MW$G$"$C$F$b!"$=$NF;6q$OD>@¥%"%W%m!<%A7?$G$D$+$C$F$b$$$$$o$1$@!#$?$H$($P9b$$$H$3$m$K$"$kLZ$N@~E*$K$D$+$C$F$$$1$P$$$$$N$G$"$k!#
　だがあいてが抵抗してくるとなるとそんな単純なやり方では、やられてしまう。?¥%/%7%s%0$NAj@~$J$d$jJ}$G$J$/!"B?J,$K8eB`E*$J$d$jJ}$,I,MW$K$J$C$F$/$k!#$D$^$j!"!V1*2s!W$H$$$&$3$H$,I,MW$K$J$C$F$/$kH&$G!"$=$&$9$k$3$H$K$h$C$F2~$a$FL¥E*$X$N$h$j6/$/$?$7$+$J%"%W%m!<%A$NJ}K!$r9M$($@$7$F$$$/$o$1$G$"$k!#
　「ものづくり」も同じく、何度もいうように「もの」は我々に対してしたたかである。余程うまくその抵抗を排除しない限り「もの」が「ものにならない」のである。そこで、いきなり抵抗を排除しようとするのでなく、?¥E*$+$i0lJb$bFsJb$bB`$C$?$H$3$m$+$i=y!9$KDq93$rGS=|$7$F$$$/!#$=$l$,$$$o$f$k!V2C9)!W$G$"$C$F!"$=$N0UL#$G!V2C9)!W$H$O1*2s!"4V@¥%"%W%m!<%A$N%A%($N=j;:$J$N$G$"$k!#
　この「迂回」のチエは人間独特のものである。動物は「迂回」ということをしない。すべて直?¥E*$G$"$k!#
　それは、動物はエサでも何でも「つくる」ことをしないで、現に身の回りにあるものを取ったり、拾ったりですませているからである。

　二つの道具

　たとえば、「人間とは道具をつかう動物」であるといわれているが、そんなことはない。動物でも高等な動物になると結構道具をつかっているのである。チンパンジーは石や棒を道具としてつかっているし、「あらい熊」でも貝を割るのに石を使う。
　だが、いづれもその道具づかいが、身体の延長あるいは補強のための直?¥%"%W%m!<%A7?$G$"$k$H$$$&$@$1$N$3$H$G$"$k!#
　これに対して、我々人間は道具を直?¥E*$K$b$D$+$&$,!"4V@¥E*$K$b$D$+$&$H$$$&N>LL$r$b$C$F$$$k!#
　道具のことをドイツ語でミッテルというが、その意味は?¥E*$H?M4V$H$N4V$KB8:_$9$k$b$N$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　だが、この「間にあるもの」の意味に直?¥7?$H4V@¥7?$NFs$D$N0UL#$,$"$k$3$H$rK:$l$F$O$$$1$J$$!#$D$^$j!"!"L¥E*$KBP$9$k?HBN$N1dD9@~>e$K$"$k$H$$$&0UL#$G$N!V4V$K$"$k!W$H4V@¥%"%W%m!<%A$N$?$a$H$$$&0UL#$G!V4V$K$"$k!W$H$NFs$D$N0UL#$,$"$k$H$$$&$3$H$G$"$k!#$?$H$($P%4%k%U$N%/%i%V$dLn5e$N%P%C%H$OA0l$G$N<#6q$d9)6q$r$O$8$a$H$9$k$b$m$b$m$N5!3#$d@_Hw$OA4$F8e 　同じことは道具についてだけでなく、一般の仕事についてもいえる。
　「ものづくり」の加工が全て迂回的であるように、今日のビジネス社会での仕事もその殆どが何らかの形で迂回的なのである。
　いいかえると「大実践」（プラクシス）のための「小実践」（プラティク）とはその殆どが迂回的であり、間?¥%"%W%m!<%A$N$?$a$N 　経済主義や合理主義は、とかくこの「迂回」と言うことを避けたがる。間?¥%"%W%m!<%A7?$rD>@¥%"%W%m!<%A7?$K$b$C$F$$$-$?$,$k!#
　だがそんなことでは、何度もいうように「もの」の側の抵抗を排除することはできないのである。商売の場合でもお客の抵抗を排除するためには直?¥K!$G$O%@%a$G!"4V@¥E*%"%W%m!<%A$,I,MW$J$N$G$"$k!#$=$N>l9g!"!V1*2s!W$H$$$&7A$G$*5R$H$3$A$i$N4V$K2?$r!V$*$/!W$+!"$=$N$?$a$N9)IW$HAO0U$,I,MW$K$J$C$F$/$k$o$1$@$,!"$=$N$3$H$O$H$b$+$/$H$7$F!"MW$9$k$K:#F|$N$h$&$K>CHq@¥%"%W%m!<%A$G$O$I$&$7$h$&$b$J$$$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　「ものあつかい」ということから話がそれたようだが、決してそんなことはない。これ（迂回ということ）も「あつかい」ということで極めて大事なことなのである。
　つまり「あつかう」とは「もの」の「抵抗」を排除して、こちらの意のままになるようにもっていくこと。そのために方法として「迂回」すること、「抵抗排除」のチエと力とそのための「迂回」のチエと力との両面をふまえて「あつかう」ということである。
　「あつかう」の反対は単に「つかう」である。この「あつかう」という能力はさきにもいったように人間独特のものである。一般の動物は何でも「つかう」だけである。

　文明と道具

　この「あつかう」ということで面白いのは道具である。
　道具はものづくりに不可欠のものであるが、それは「ものをあつかう」ことによってつくられる。一般の「ものづくり」と同じである。
　だが、つくられた道具は「つかう」道具と「あつかう」道具にわかれる。
　道具そのものに「くせ」や抵抗がなく殆ど考えなしでバカチョン式につかえる道具が前者であり、道具そのものにつかうものに抵抗する「くせ」や意地のわるいところがあって、それに負けないような上手なつかい方をマスターしない限り、「道具づかい」がうまくいかないというような道具が後者である。
　前者の道具のことを「トウール」という。後者の道具のことを「インストウルメント」という。バカチョンカメラが前者の例で、ヴァイオリンなどの楽器が後者の例である。
　前者の場合は単なる「つかう」でいいが後者の場合は「あつかう」ということでの工夫や修練が必要である。
　文明化の世界では、道具は旧いインストウルメント型の道具がイージーユースのトウール型の道具にどんどんつくりかえられていく。その方が「快適」ということでのぞましいからである。
　だからといって全てがトウール化されるとは限らない。また旧いインストウルメントがトウール化されても、新しいインストウルメントが開発されてくる。
　つまり「つかう」ということですまされる道具もあるが「あつかう」ということで細心のチエを必要とする道具もある。すべてがトウール化されて後者が消えてなくなるということはないということである。
　いいかえると、「ものづくり」とはものをあつかうことであるが、そのためには道具を先ず「あつかわねばならない」というケースが絶えてなくなることはないということである。
　最近の若い人達の中には文明なれ、トウールなれしすぎて、「インストウルメント」の「あつかい方」を知らない人が多くなっている。また多少知っていても、面倒くさがってインストウルメントを敬遠する人達が多くなっている。
　道具を「快適」につかうということではそれでもいいわけだが、道具のあつかい下手が昂じて、肝心の「ものづくり」の「ものあつかい」が下手になったり、無神経になったのでは困りものである。
　道具づかいには無神経であっても「ものづくり」は無神経であってはどうしようもないのである。
　そこにう万事トウール化指向の今日の文明世界での「ものづくり」を考えるうえでの大きな問題があるといえる。バカチョンカメラを「つかう」ような形で「ものづくり」をしているとすれば、「抵抗排除」も「迂回」もヘチマもない。それこそ何もかもパーになってしまうのである。
　また、そんなことでは動物に笑われる。人間とは生産人（ホモ・ファーベル）などと威張ってはおれなくなる。動物とちがう人間の威信にかけても、今一度「ものづくり」の意味、そのために「もの」を「あつかう」ことの意味を、プラティクの観点からじっくり考え直すべきときで、そこから?¥Ev$N!V$b$N$E$/$j!W$N%A%($H$7$F$N?7$7$$!V

　二つの「ものづくり」

　昔、ある佛像つくりの彫刻家がある日、ある時、石を刻んでいて、「この石の中には佛様がいない」といって刻むのをやめてしまったという話がある。
　この彫刻家にとっては石を刻んで佛の像をつくるということは、石の中に元来ひそんでいる佛様を、石を刻むことによっておもてにあらわす（現在化する）ということだったのである。ところが、たまたま手がけた石の中にはどうやら佛様がひそんでいないらしいということがわかり、これではいくら石を刻んでもムダというので、仕事をやめてしまったというわけである。
　このことは、「ものづくり」とは何かを考えさせるうえで面白いエピソードといえる。
　何故かというと、一般に「ものをつくる」というとき、そこには「つくる」ものの頭の中に、何をどんな風につくるかという予めのイメージや構想があり、それに従って、素材をあつかうという風に思われがちだからであるが、このエピソードはそれだけが「ものづくり」でなく、今一つ別の「ものづくり」があるということを教えてくれているからである。
　すなわち、つくるものがイメージや構想をもたないでも、素材の中からひとりでに「もの」が出てくる。そういう形で素材を「あつかう」ことによって、そこに新しい何かが生まれ出てくるような今一つの「つくり方」があるということである。
　前者を「制作型」の「ものづくり」という。これに対して後者は、今日のことばをつかえば「ポテンシャル・ディヴェロップ型」ということになる。
　どちらも、「ものづくり」であるが、今日では「ものづくり」というととかく前者の「制作型」の方が専らとなり、後者のような「ものづくり」が忘れられがちであって、その忘れられかけている今一つの「ものづくり」を思い出させるうえで右の話は面白いというのである。
　素材の中にひそむポテンシャルを「現在化」するということは、素材の中の「長」をひきだして「短」を殺すということである。だがそのやり方は、ハードなやり方でなくきわめてソフトなやり方でなければならない。
　つまり、「ものあつかい」がきわめてやさしく、ていねいでなければならない。ハードな力まかせの乱暴なやり方では「短」を殺すのはいいとして、ことについでに「長」の方までぶちこわしてしまうことになりかねないからである。
　つまり、「ものづくり」としての「ものの抵抗に対する抵抗」はやさしく、ていねいでなければならない、ということである。
　この「ものあつかい」の「やさしく、ていねいに」という原則は、「制作型」のものづくりについてもあてはまるきわめて大切なことなのであるが、制作型の場合はえてしてこの原則がゆがめられやすい。何故なら、制作型の場合は、自分の頭の中にあるイメージや構想を「現実化」（現在化ではない）することが?¥E*$G$"$k$?$a!"$H$b$9$k$H!"$=$NL¥E*$NC#@.$K$"$;$C$F!"AG:`$rWs0UE*$K!"L5B$:n$K$"$D$+$&$H$$$&$3$H$K$J$j$d$9$$$+$i$G$"$k!#?S$@$7$$>l9g$K$OAG:`$N@~E*$KAG:`$r$"$D$+$&!"J8;zDL$j!VL¥E*$N$?$a$K$O0$N$3$H$=$&$$$&$3$H$K$J$j$d$9$$$N$G$"$k!#
　「制作」としてのものづくりがわるいということではない。「ものづくり」は何も昔の彫刻家の佛像づくりのような「ものづくり」だけとは限らないのであって、「制作」が頭の中のイメージや構想という形では存在しても、現には「ない」ものをつくり出すことである以上、それは大いに行われていいわけである。だが、そのためには「ものあつかい」が粗雑になったり乱暴になったりしたのではまづいということなのである。

　二つの技術

　とくに今日では「ものづくり」のための「ものあつかい」というプラティク（小実践）が単なるチエやノウハウの域をこえて、「技術」ということで半ば画一化され、パターン化されているいるようなときには、「制作型」の場合はもちろんのこと、今まで「やさしく、ていねい」を信条としてきた「ポテンシャル・ディヴェロップ型」の「ものづくり」といえども、今一度その「ものづくり」を実践（プラティク）としての「抵抗とは迂回」の原則に立ちもどって見直し、考え直すことが必要である。
　何故なら一口に技術といっても、今日では、二つの技術が複雑にいりまじっているからである。
　一つは現実の「ものあつかい」から生まれ出てきた実践型の技術。今一つは、何らかの理論から演繹的に生まれ出てきた応用型の技術。この二つがいわゆる「技術」の名のもとに混然一体となっているのが今日の技術というものであるからである。
　前者の技術のことをテクニックという。後者の技術のことをテクノロジーという。また。両者のいづれかにせよ、それが具体的な「ものづくり」に普遍的に役立つようにパターン化され定式化されている場合、これをエンジニアリングという。
　日?¥$G$O%F%/%N%m%8!<$N$3$H$r!V9)3X!W$H$+!V2J3X5;=Q!W$J$I$H$b$$$C$F$$$k$,!"$I$A$i$bF1$8$3$H$G$"$k!#
　テクニックとはギリシャ語のテクネーから出て来たことばで、このことは、いわゆる技術なるもののルーツが現実の「ものあつかい」のチエの所産であることを意味している。古代のギリシャ世界では今日でいうようなテクノロジーやエンジニアリングといったものは一切なかったということである。技術とは十中八九までがテクニックだったのである。
　それが今日では技術というと、圧倒的にテクノロジー、エンジニアリングであって、テクニックは旧い職人芸ということで、さげすまれ、技術の裏街道に追いやられている。
　だが、そのことはさておき、ここで面白いことは、テクニックとテクノロジーがそのありようにおいて、さきにいったものづくりの二つのパターンすなわち「ポテンシャル・ディヴェロップ型」と「制作型」あるいは「現在化型」と「現実化型」にきわめて似かよっているということである。
　すなわち、前者が「ものあつかい」の中から自然に出て来たということで、後者が我々の頭の中にある何らかの理論から応用ということでつくられて来たということで。
　この「理論」を制作におけるイメージや構想とおきかえるとテクノロジーはそのまま「制作型」の技術ということになるのである。同じように前者の「ものあつかい」を素材の材質ということにおきかえると、テクニックはそのままポテンシャル・ディヴェロップの技術ということになるのである。
　もちろん、現実には、いづれにしろ、その通りにはいかないで制作型といえどもテクニックをつかう（エンジニアリング化されたテクニックという意味で）こともあれば、ポテンシャル・ディヴェロップ型がテクノロジー（やはりエンジニアリング化されたテクノロジーという意味での）をつかうこともあるわけだが、少なくともテクニックとテクノロジーの?¥

　技術に何故「配慮」と「慎重さ」が必要なのか

　次に、テクニックとテクノロジーは前者では「配慮」ということが大きくものをいうのに対して、後者では「慎重さ」ということがが大きくものをいうというちがいがある。
　「配慮」とは「心くばり」である。
　何故、テクニックに配慮が大きくものをいうかというと、テクニックそのものが、現実に「ものをあつかう」（ものの抵抗への抵抗を考える）うえでの具体的で実践的なソフトなチエの産物だからである。そういうソフトなチエは「あつかうもの」に対して無神経であったり、感性が不足していたのでは生まれてこない。
　チエに先立つものとして、チエを啓発する引き金として、どうしても、ものに対する「心くばり」、「配慮」ということがどんな場合でも先行せざるを得ないようになっているのである。
　つまり、テクニックの母胎は「配慮」であるということで、その意味でテクニックでは「配慮」が他の何ものにもまして大きくものをいうのである。
　これに対して、テクノロジーとなると、そういう現実との関係での「配慮」はいらない。それよりも、理論としての一貫性とそれにもとづく計算（インとアウトの関係についての計算だけでなく、原因と結果という形での因果律としての計算をもふくめて）のたしかさの方が重要性としては勝るということになる。
　テクノロジーの?¥ 　何故なら、テクノロジーには、計算は間違っていないが、現実には必ずしもその通りにはいかない。医者がいうと「手術は成功したが、患者は死んだ」ということが少なからず生じがちである。
　だから、テクノロジーを技術としてつかうときには呉々も慎重さが必要ということになる。
　もちろん、この「慎重さ」とはさきのテクニックにおける「配慮」とは同じ「心づかい」でも意味がちがう。後者はさきにもいったようにテクニックの母胎であるが、前者は単に十分注意してといった程の念押しとしての心づかいにすぎない。あるいは技術者は良心的でなければならないといわれるときの「良心」の問題としての「心づかい」である。
　テクノロジーにしろ、テクニックにしろ、今日ではいづれもエンジニアリングという形で広くつかわれており、それだけにそのつかい方には極度の慎重さがもとめられる。このことはたとえテクニックをあつかうものとしても忘れてはならない今日の「技術の倫理」上の大命題である。
　だがだからといって、こころが慎重に傾斜しすぎて、テクニックを扱うものが、肝心の「配慮」としての心づかいをいい加減にしてしまったのではテクニックということばが泣く。またそんなテクニックは実践的には役に立たないということになる。

　フローネシスと省資源、省エネ

　また、かりに「配慮」が十分であっても肝心のテクニックとしてのチエが出てこなければ何もならない。あるいはチエが出ても、それがいわゆる職人の勘や感による応急策におわって、再現性に乏しい、また、そのテクニックが余りにも閉鎖的（秘伝のような）で、普遍性に欠ける昔前のテクニックのような形のものでしかないとすれば、テクニックとしての今日的意味が失われる。
　今日ではテクニックは「配慮」を一層きめこまかく深くすることも大切だが同時にそこで開発されたテクニックとしての新しいチエやノウハウを出来るだけ再現性と普遍性のある形での開かれたチエとノウハウに近づけていく努力が必要なのである。
　とくに、「もの」のポテンシャル・ディヴェロップということが省資源、省エネとの関連で大きな命題になりつつある今日では尚のことそれが大事になってくるのである。もちろん、ポテンシャル・ディヴェロップにはニューサイエンスやそれから生まれるテクノロジーも大きく寄与していくだろうことはたしかであるが、だからといって全てをテクノロジーまかせにすることはできない。やはりもちはもち屋でポテンシャル・ディヴェロップにはテクニックが基?¥E*$J%+%.$r$K$.$C$F$$$k$o$1$G$"$C$F!"%F%/%N%m%8!<$,05E]E*$G$"$l$P$"$k$[$I>0$N$3$H!"$=$l$KIi$1$J$$%K%e! 　このテクニックの「配慮」のことをギリシャ語で「フローネシス」という。また、テクニックがフローネシスと一体であるということからテクニックのことを「アート」ともいう。一般的に「人工のもの」とか「芸術」などといわれているが、「アート」とは「テクニック」そのものなのである。

　技術におけるカントの「ゲミュート」の意味

　「配慮」とか慎重さといった「心づかい」の問題に関連して今一つつけ加えると、いわゆるテクニック、エンジニアリング、テクノロジーをふくめての技術には、「配慮」や慎重さを超えた、今一つの大きな心の問題があるということである。
　何故かというと、我々が「技術」をつかうのは、何かを何とかしたい（あつかいたい）と思うからである。その思いは一般には意図や?¥E*$H$$$&$3$H$GJR$E$1$i$l$,$A$@$,!"$=$l$@$1$,!V;W$$!W$N$9$Y$F$G$O$J$$!#
　何とかしたいと思う前にたとえばこれはむずかしそうだとか、こんな素材は気に食わないとか、これは面白そうだ、何とかつかえないものか、といった「もの」に対する難易、好き嫌いという形の感覚的、感性的な判断が先行するのが普通であって、こういったことで、「もの」に対して心が動くことも「思い」のうちなのである。
　「何かを何とかする」というのはそういった先立つ思いが何らかの形で整除された「もの」に対して何らかの前向きの決断が下ろされてはじめてからあとのことなのである。たとえば、「難しそうでもやってみよう」、「気にくわないけれど逃げないで、トライしてみよう」といった形で。とくに「もの」についての好き、嫌い、得手、苦手の感情が問題で、同じ決断でも好きだからやる、得手だからやるだけではいかにも安易であって、そんな安易な決断では、かりにそれによって「何かを何とかしよう」と思っても、そのこと自体さほど大したことではなく、ごくありきたりのことに止まってしまうのである。
　「何かを何とかしよう」と思っても、それが新しく何かを試みることである以上、たとえ、苦手なものでも気にくわないものでも、逃げないで、何とかしてやろうという気にならない限り、「何ともならない」ことが多いのである。だから、決断は、苦手なものについて、気にくわないものについて、態度を前向きにする決断であることがのぞましい。また、それが技術者の根性というものなのである。好きなことだけを、得手なことだけを追いもとめていたのでは技術者ではないわけである。何故なら、技術とは抵抗のための技術だからである。その技術をあつかう技術者が自分の内心での抵抗に負けてしまったのでは話にならないからである。
　つまり、苦手だから、気にくわないからといって逃げてしまったのでは技術者としての自分の「気がすまない」という気がおこらなければ技術者として失格だということである。そういう技術者としての根性あるいは気負（キップ）のようなものを総稱して、技術における配慮や慎重さを超えた「心」というのであって、こういった「心」の問題は、テクニシャンであれエンジニアーであれ、テクノロジストであれ、およそ技術にたづさわるものに広く普遍的に通底する大事な問題なのである。
　カントは、こういう心のことを技術の「ゲミュート」（das Gemｬt）といっている。ゲミュートとは「心情」のことである。あるいは、これを「趣味」（ゲシマック＝der Geschmack）ともいっている。何で「趣味」かというとそれは半ば「趣味」の問題だからである。「趣味」とは何でもいい加減にしておくことは「気がすまない」という気負（キップ）の問題なのである。つまり、技術者には、そういった技術者独特の趣味の問題が大きくものをいっている筈だということでカントはそういう意味で、そういう技術者独特の心のことをゲミュート（心情）といっているのである。
　今日では技術そのものが個別化され、細分化されすぎているため、それぞれの専門技術者の心の中でこのゲミュートの力が弱まっているようである。苦手なものは避けようとする。気にくわないものにはやる気を示さないといった了見の狭い技術者が多くなりつつあるようである。
　専門の技術者が科学や技術の進展の都合によって細分化され、「しか型」の狭い領域にとじこめられるのは仕方がないとして、せめて心だけは大きく、広くひろげることによって技術者としてのゲミュートの先細りを防ぐことを心がけてほしいものである。これは技術者としての「抵抗」の問題なのである。

　全ての技術を「プラティク」の観点から考え直そう

　技術の問題についてのべるとなると話が大きくなりすぎるから、それは別の機会にゆずるとして、要は技術はそのルーツが何であれ、「ものをあつかう」という生活的実践に即した、現実的でプラティクなものでないという意味がないということである。
　いいかえると技術とは単なる知識や理論ではないということである。
　その意味で、とくにテクノロジーから生まれたニューエンジニアリングについても、実践あるいは実用という観点から徹底的な見直しと検証が必要である。単なる実験のことをいってるのではない。そんなことならテクノロジーでもエンジニアリングでもどこでもやっている。大事なことは実験でなく実践と実用という観点からの見直しなのである。
　実験とは自分のアイデアや計算が荒唐無稽のものでなく、誤っていないということをテストという形で実証するために行われるトライアンドエラーである。だから、かりの実験ではＯＫでも、いざ実践、実用ということになると、それだけでは役に立たないということは多分にありうることなのである。
　戦前、戦時下の日?¥$N3$73$NHt9T5!$N3+H/$OM}O@E*$K$O@:eL$r$-$o$a!"=>$C$F$=$N5!BN@_7W$O$-$o$a$F%9%^!<%H$GM%H~$G$"$C$?$,!"/$7$b!V2wE,!W$G$J$/%Q%$%m%C%H5c$+$;$G$"$C$?$H$$$&!#
　この点アメリカの飛行機開発は全く逆で、理論よりも計算よりも、実用ということを何よりも優先した。機体は航空力学の理論からみてさほどスマートではなかったが、それをのりこなすパイロットは「あつかいやすい」ということでいろいろ工夫されていた。
　同じ飛行機開発でも、技術のつかい方のこの彼我の大きなちがい（天地のちがいにも匹敵する）が、日米航空決戦の明暗を大きくわけたのである。
　アメリカ人は技術を単なる知識としてでなく、徹底的にプラティクという観点からとり入れ、つかっていたということで、このことは、この先おこるであろう改めての日米技術対決に対処する日?¥$N5;=Q 　いいかえると、エンジニアーのゲミュートを今こそ、理論やハウツーに向けてでなく、はっきりと実用のプラティクに向けて広く深く向け直させなければならないということである。
　またそれが、技術という名の「実践知」（エピステーメ）の大いなるリフレッシュにつながる「革新」の途でもあるということである。

　何故争いが絶えないのか

　生きていくために、「もの」をつくりそのために、「もの」をあつかうチエを授けられているのが、人間というものであるが、問題なのは、その「あつかい」の対象が、「もの」だけでなく、人にも及んでいることである。
　つまり、人も「あつかい」の対象になっているということである。
　そこから、人間世界独特の支配（ルーリング）という考え方や対立が生まれる。また、支配をめぐって、人々が争うということになる。
　支配とは、相手の抵抗を有無を言わさぬ形で封殺し、こちらの意図通りに相手を動かすために相手に対してハードな「あつかい」をすることである。
　だが、人間の世界は、誰か一人だけが支配の座について、あとのものが、それに対して何の抵抗もしないで、単に唯々諾々と従っているほどには甘く出来ていない。人間の「ものあつかい」のチエと能力が特定の人間の占有物でなく万人共有のものであるのと同じく、「人」を支配したいという欲望も、またそのための「人あつかい」のチエや能力も万人に共有なのである。
　いいかえると、人それぞれが互いに相手を支配したい、またそういうことで人を「あつかいたい」と思っているのである。逆にいうと、各自、他人を支配したいが、自分が支配されるのはいやと思っているということである。まことに身勝手な考え方であるが、そういう身勝手な考え方が体の心底までしみついているのが人間というものなのである。
　だから大は天下国家の支配から、小は小さな「彼と彼女」、「おれとあいつ」の間での支配権の取り合いっこをめぐって、争いが絶えないということになる。
　人間の「争い」は必ずしもエサの取り合いっこだけとは限らないのである。
　ただ、「人をあつかう」ためのチエや能力は、「ものをあつかう」場合のチエや能力とちがって、テクニックやエンジニアリングという形で明確に定式化されたハウ・ツーがないため、画一化、普遍化されにくいため、「支配したい」という欲望は各自にあっても、それを現実化するための「人あつかい」のチエや能力という点で、人々の間に凸凹が生じるということにならざるを得ないため、結果的には凸の方が支配に成功し、凹の方が、それに失敗するという不公正なことになる。そこが同じ「あつかい」でも「ものあつかい」と「人あつかい」の大きなちがいがあって、その意味で「人あつかい」とはまことに厄介なことといわざるを得ない。
　「誰でも木は削れるが、誰でも王様になれるとは限らない」といわれる所以である。
　いいかえると、この世の中に、人々が支配と被支配にわかれたり、階級的差別が生じたりするということは、神の前に平等であるべき人間として、あるまじき言語道断のことというべきなのであるが、「人あつかい」ということで、人々にそのチエと能力に差がある以上、仕方がないことだということである。
　そういう不公正なことをなくするためには、万人に「人あつかい」ということで同じチエと能力を与えるか、でなければ人々の支配力をなくさせるかの、いづれしか途はない。

　人間生活における支配欲の意味とメリット

　このうち、はじめの方は現在では不可能であるが、この先「人あつかい」ということで各自が努力することによって人智が拓かれていけば何とかなる可能性がある。
　だが、あとの方は、この先ますます強まることはあっても、なくなることはなさそうである。何故ならこれは人間の?¥G=$H$b$$$&$Y$-M_K>$NLdBj$,$"$k$+$i$G$"$k!#$@$+$i$3$l$r@)8f$9$k$3$H$O$G$-$F$b!"$3$l$r:,K¥E*$K>C$7$5$k$3$H$O$G$-$=$&$G$J$$!#$3$N@$$+$iAh$$$d@oAh$r$J$/$9$3$H$,$G$-$J$$$N$O$3$N$?$a$G$"$k!#
　また、支配欲にはそれなりに意味があるのであって、これを根?¥E*$K$J$/$7$F$7$^$($P?M4V 　何故なら、人間に支配欲がなくなれば、「もの」がつくれなくなるからである。何故かというと、人間生きていくためには必ず何らかの「もの」をつくらなければならないわけだがその「ものづくり」のためには、人々が協力し合わなければならないからである。個人では「もの」はつくれないのである。つまり、人間は集団化しなければ「もの」はつくれないということであって、だとすれば、そこには必ず集団を率いるリーダーというものがなければならないということになる。だが人間に支配欲がなければ、そういうリーダーなど出て来よう筈がないのである。かりに一時的に人々が集団化してもリーダーなしではそんな集団は永もちしないのである。当然「ものづくり」そのものも不可能ということになり、そのため人間は生きていけなくなり人類は死滅せざるを得ないということになる。そんなことにならないためには人間に支配欲はないよりあった方がいいということになる。また、人間に支配欲がなくなれば人間社会はバラバラになる。何故なら人間は個人では生きられない。必ず社会化という形での人間同志の交流や連帯が必要なのであるが、そういう社会の中で人々が安全に生きていくためには何らかの秩序やルールが必要だからである。だからその秩序やルールは自然に出来たものであれ人為的につくり出されたものであれ、いづれにせよ人間の支配欲の産物なのである。つまり、人間の他人を支配したいという欲望が、単に他人を支配することから、世の中全体を支配したいという大きな支配欲に昇華されそれが人々の共通意志となることから陰に陽に生まれてくるのがいわゆる秩序とかルールといったものだということである。
　ところが、人間に支配欲そのものがなくなればそういう秩序もルールも生まれようがない。従って人間社会そのものがバラバラになり成り立たなくなるということにならざるを得ない。
　そういう意味で人間の支配欲がなくなれば社会はバラバラになるというのである。当然人間そのものが生きていけなくなる。従って、そんなことにならないためには人間の支配欲はないよりあった方がいいということになる。
　ということで人間の支配欲には人間の存在との関わりで、それなりに大きな意味があるのである。
　くりかえすと、
　第一に、人間の人に対する支配欲は自然や「もの」に対する支配欲から転化したものである。
　第二に、それが人間の集団化や組織化のチエ（リーダーを生み出すチエ）につながり、そのために「ものづくり」が大々的に出来るようになった。
　第三に、それが世の中をうまく治めていきたいという人間の共通意志を生み、そのことによって、人間社会の安全保障としての秩序やルールが生まれてくるようになった。
ということである。

　支配欲を「生活ばなれ」させること

　だから、支配欲そのものは悪くない。問題はその質や程度だということになる。
　何故、支配欲が的外れになったり、悪質になったりするのか。
　それは、支配欲そのものが人間の生活のため（「ものづくり」のため、社会生活を安全たらしめるため）のものであるということを忘れて、支配欲のための支配欲ということで「生活ばなれ」するからである。支配欲が人間の生活の便宜のための?¥G=E*$JM_K>$G$"$k$H$$$&$3$H$G$"$l$P!"$=$l$O@83h$N$?$a$NI,MW:G>.8BEY$H$$$&$3$H$G<+$i$,@)8f$5$l$kH&$J$N$G$"$k$,!"$=$l$,!V@83h$P$J$l!W$9$k$H!"$=$N@)8f$N;u;_$a$,$-$+$J$/$J$C$F$7$^$&$N$G$"$k!#
　たとえば味覚は?¥Mh$O?)$YJ*$,FG$+$I$&$+$r;!CN$9$k$?$a$N463P$G$"$j!"$=$N0UL#$GL#3P$O?H$N0BA4$r 　支配欲もそれと同じく、その?¥Mh$N@83hE*0UL#$rK:$l$F>!

　支配欲と自己顕示欲を混同させないこと

　何故そういう逸脱が生じるのか。それは味覚の逸脱が感覚の官能化ということが引き金になっておこるように、支配欲にこれと似た悪しき欲望がむすびついてそれが引き金になるからである。
　それならこの悪しき欲望とは何か。
　それは一口にいって「自己顕示欲」である。つまり他人の前に自分をよく見せたいという欲望である。
　その欲望と支配欲が重なり合うから、「生活ばなれ」するのである。
　生憎なことにこの二つの欲望はその現象形態（ゲシュタルト）としてよく似ている。だから、その「生活ばなれ」に一層拍車がかかり、支配欲は度外れにエスカレートしていくということになる。同様に、支配欲そのものも質的に悪化していく。
　一般に支配欲というと鼻持ちならぬ悪しきものと見られがちなのはこのためである。
　だが、これは、ことの?¥Mh$N0UL#$+$i$7$F@5$7$/$J$$!#0-$$$N$O;YG[M_$G$J$/!V<+8J82<(M_!W$J$N$G$"$k!#
　たとえば「支配欲見え見え」とか、「支配力むきだし」などと人々の顰蹙（ひんしゅく）を買うのは支配欲が度外れでいや味だからでなく、自己顕示欲が度外れでいや味だからなのである。
　だから「自己顕示欲見え見え」あるいは「むきだしの自己顕示欲」というべきなのである。
　それなら「自己顕示欲」とはどんな欲望か。されはさきにもいったように「他人に対して自分をよく見せたい」という欲望である。何故そんな欲望が生まれるのか。
　それは、人間には必ず何らかの劣等感がありそれを何とかしてひっくりかえしたいという「優越願望」があるからである。自分の素顔に自信のない女性が化粧に凝るのと同じく、自分で自分に自信をもてないもの程自信回復のために、他人に対して優位にたちたいと思うものなのである。たとえば身をかざる、恰好つけて突っ張る、威張る、強がる、ハッタリをかける、ホラを吹く、ウソをつく、強引で押しつけがましい態度をとる、他人に対して馬鹿親切になる、恩着せがましいものいいをする、必要以上に世話を焼く、お節介好き、等々といったことは全てそういった「優越願望」のあらわれなのである。当然、度外れな所有欲、権力欲もこの中に入る。
　これに対して支配欲にはこういったコンプレックス型の原意識や願望はない。単に生活の必要によって、「もの」や「人」を「あつかいたい」という意図があるだけである。
　だが、そのあらわれ方、とりわけ人に対する「あつかい方」が現象的に自己顕示欲のそれと多分に似たようなことになりやすいため、とかく支配欲と自己顕示欲は同じようなものとして混同されやすい。またそれをいいことにますますこの二つは結びついて支配欲そのものがエスカレートされたり、途中でこの二つがいれかわったりというわけのわからないことになりやすいのである。

　「自己主張」と「自己顕示」を混同させないこと

　また、この「自己顕示」は「自己主張」とも混同されやすい。
　「自己主張」とは、他人に対して自己を強調するということで、これは元来が欲望の問題でなく、自己と他者との関係での態度の問題なのである。
　その態度が前向きで積極的であるのを「自己主張型」というのである。その反対に、他者に対してひっこみ思案で消極的であるのが「自己超越型」である。
　つまり、「自己顕示」は欲望、「自己主張」は態度。その意味でこの二つはその質もありようも全くちがうのであるが、そのあらわれ方に両者が何となく似ていることから、これまた混同されやすいのである。
　「自己主張」は「自己主張」、「自己顕示」は「自己顕示」とこの二つは、さきの「支配欲」と「自己顕示」との関係と同じくはっきり区別しておかねばならない。
　いいかえると、支配欲と「自己主張」は人間生きていくうえで必要不可欠の欲望もしくは態度であるが、「自己顕示」は生きていくために元来が不必要な、なくもがなの悪しき欲望であって、?¥Mh$J$i$J$/$7$F$7$^$$$?$$9%$^$7$+$i$6$kM_K>$@$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　といって、これを全くなくすということは現在のところ不可能である。何故なら、現代人の殆どが何らかの形での劣等感の持主だからである。また、そういう劣等感を持たせる要因の殆どが、?¥?M$N@hE7E*MW0x$K$h$k$b$N$G$J$/!" 　つまり、社会が?¥Ev$K$h$/$J$i$J$$8B$j!"?M!9$N?4$,$C$FNtEy46$b$J$/$J$i$J$$$H$$$&$3$H$G$"$k!#
　だから「自己顕示」だの劣等感などといったくだらないこと（その中には性的劣等感も入る）、またそれによっておこる人間間のゴタゴタ、もめごとや、またそれによって人々が受けた不愉快感をなくすためには先ず社会を良くしなければならないということであるが、そんなことをいっていたのでは何日のことかわからない。
　そんなとりとめもないことを考えているひまがあったら、先ず人々が正しい支配欲の満たし方について考え直し、工夫し直すことである。また、正しい「自己主張」のしかたをマスターすることである。
　この二つがしっかりすれば「自己顕示欲」など自然と消えてしまう筈なのである。

　正しい「自己主張」の仕方をマスターしよう

　たとえば「自己主張」と「自己顕示」が混同されやすいといったが、そのうらには「自己主張」したくともその方法がわからないため、ついそれが自己顕示型にすりかえられてしまうということが少なくないのである。
　たとえば人に向かってまともに口がきけないため無理して突張る、おタカくとまる、余計な世話を焼くという風に。
　もし?¥?M$,<+8J 　支配欲についても同じで、そのための「もの」や「人」に対する正しい「あつかい方」を知っていれば、支配のために、暴力に訴えたり、スゴンだり、ハッタリかませたりという「エゲツない」ことをしなくてもいい筈なのである。

　私の「サービス論」の意味

　私が長年サービスの問題に取り組んでいるにはこのためである。何故ならサービスとは自己主張とそのやり方に関わる問題だからである。
　「サービスとは他人に自分の価値をわからせるためのプレイについての積極的な特別な工夫と努力である」というのが私のサービスの定義である。
　この「価値をわからせる」ということはそのまま「自己主張」とおきかえてもいいわけだ。そのためのプレイ（行為）をいろいろ「積極的に」いろいろ工夫、研究してみようというのが私の「サービス研究」なのである。何故「積極的に」ということをことさらいっているかというと、日?¥?M$O2$JF?M$H$A$,$C$F<+8JC6KE*$K$J$j$,$A$@$+$i$G$"$k!#!VD@L[$O6b!W$H$+!"!V$$$$$b$N$O1#$9$h$jO*$o$l$k!W<0$K!"!V<+8J?M$K$"$:$1$k$H$$$&9%$^$7$/$J$$!J@N$O$H$b$+$/:#;~$G$O!K9M$(J}$,?<$$$+$i$G$"$k!#$^$?!"$=$s$J$3$H$@$+$i!":#;~$N?M!9$NBgH>$,?M$+$iGO7W$J?@7P$r$D$+$o$M$P$J$i$J$$$H$$$&$_$8$a$J$3$H$K$J$k$N$G$"$k!#
　サービス下手が劣等感の持ち主を量産しているということで、これでは社会の責任というより己の不徳というものである。こういうことにならないようにというのが私の「サービス研究」の趣旨なのである。
　また、商売でも人間関係でも何でもゲームでありドラマであるということをしきりにいっている理由もここにある。何故ならその見方をすることによって、商売をはじめとする人間関係の「争い」についての見方、考え方もちがってくるし、またそうすることによって「争い」の中での「人のあつかい方」に対する新しいチエも湧いて出てくる。?¥Ev$N;YG[$N0UL#$b$o$+$C$F$/$k$H;W$o$l$k$+$i$G$"$k!#2?8N$J$i!"%2!<%`$K$7$m%I%i%^$K$7$m!"$$$:$l$b?M4VF1;N$N;YG[$b$7$/$O<+8J

　人の「あつかい方」の技術化を考えよう

　最後に私は「全ては技術」ということで生産技術や研究開発から、話し方、考え方、歩き方まで、人一?¥6/$$!V5;=QE*4X?4!W$r$b$A!"$=$l$>$l$N5;=Q$K$D$$$F9-$/?<$$8&5f$r$D$E$1$F$$$k$,!"$3$l$b;YG[M_$d!"!V$b$N!W!"!V?M!W$K$D$$$F$N!V$"$D$+$$!W$H4X78$,$"$k$+$i$G$"$k!#$=$N!V$"$D$+$$!W$N%N%&!&%O%&$,C1$K!V$b$N!W$K$D$$$F$N!V$"$D$+$$J}!W$H$7$F5;=Q2=$5$l$k$N$G$J$/!"!V$b$N$"$D$+$$!W0J30$N!V?M$"$D$+$$!W!"!V>pJs$"$D$+$$!W$=$NB>=t!9$N?M4V4X78$G$N$4$?$4$?!"$b$a$4$H$N!V$"$D$+$$!W$K$D$$$F$b2?$i$+$N7A$G$N5;G=2=$,I,MW$G$"$j!"$=$l$,$G$-$J$$$b$N$+$HI,;`$K9M$($F$$$k$+$i$G$"$k!#
　残念なことにまだ現在のところでは全てがわけのわからぬ霧の中。日暮れて道遠いといったところであるがいずれそのうちにブレーク・スルーの途が拓かれるものと確信している。
　いいかえると、支配欲、自己主張（サービス）とそのための「人のあつかい方」あるいはプレイとその技能化をタテに考えているのではない。そこから新しいプラテクの「実践知」（エピステーメ〕が拓かれていくと確信しているからだということである。

以上

文責　＆　HomePage 制作：（株）マネジメント・サイエンス研究所

コンサルタント　城　誠

[?¥] '2007-7-20